激化するサイバー攻撃への切り札 「脅威インテリジェンス」が抱える課題:世界を読み解くニュース・サロン(2/3 ページ)
近年、企業などへのサイバー攻撃の数は見過ごせないレベルにある。そんな状況から、近年、通常のセキュリティ対策だけでなく「脅威インテリジェンス」と呼ばれるセキュリティ対策が注目されるようになった。
脅威インテリジェンスの問題点
まず脅威インテリジェンスの問題点を見ていきたい。1つ目は、脅威インテリジェンスを導入するとセキュリティ担当者は日々、数多くの断片的な脅威に関するデータやリポートを受け取ることになり、それに対応できない事態が生じる点だ。
脅威インテリジェンスでは、莫大な脅威やリスク情報を、ダークウェブなどのソースから収集して報告していく。ただその量が多すぎて、多くのセキュリティ担当者がさばききれず、結果的に脅威の情報が見過ごされてしまっている。何ページもあるリポートなど次々渡されても、棚卸しをし続けるのはかなりの労力となるし、本当に自分たちが必要な情報が何か分からなくなり、警告の意味をなさない場合もある。
先の企業幹部は、「脅威インテリジェンスでもたらされる情報が全て検証されているわけではないので、フォルスポジティブ(検出する必要のない事態を、何らかの兆候を示すものとして誤って検知すること)な的外れの警告もあるし、リポートやデータをどこまで信頼していいのか悩ましいことがある」とも指摘していた。
さらに、今日のサイバーセキュリティ対策にはこんな問題もある。最近、企業や官公庁などは、いろいろな対策ツールを多層的に導入。それによって、サイバー攻撃に対応するよりも、複雑な設定などツールの管理に時間を取られてしまっている。要は、サイバーセキュリティ対策が強化されていることが裏目に出ているのだ。加えて、いろいろなベンダーのソリューションを導入していることで、ソリューション同士の相性が悪く、「摩擦」を引き起こすこともある。
そこに脅威インテリジェンスのソリューションがあれば、セキュリティ担当者の負担はさらに高まるという悪循環が生まれているのである。その結果、メールなどで毎日のように届くリポートすらまともに見なくなる。こうしたセキュリティ対策の問題点が、攻撃者らに付け入る隙を与えることになる。
加えて、サイバー攻撃者らもどんどん巧妙になっていて、防御策を上回ってくる。攻撃者の数も増加していて、攻撃ツールの技術改良が進み、攻撃が巧妙になってきているのだ。ウイルスなどもどんどん洗練されていると専門家らは分析している。
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