7年前に大ブレイクした「水平開きノート」、その後どうなったの?:あの話題は今(4/4 ページ)
1つのツイートが大当たりして注文が殺到、それから7年以上が経過した「水平開きノート」。売り上げを大きく伸ばしたが、その後はどうなっているのか。同製品の開発者である中村印刷所の中村輝雄社長を取材した。
国内より国外に目を向けるワケ
水平開きノートは開発後、国内で特許を取得している。その後、中国、米国、英国、EUでも特許を取得した。この6月には、知人の協力によりアイルランドの教育機関から500冊の注文が入った。
先方からノートのデータを受け取り、中村印刷所で印刷・製本して航空便で納品。1冊500円で受注したが、原価は750円、つまり原価割れしている。
「海外からの注文は初めてでしたし、今回はPRのためにつくりました。各国から学生が集まる教育機関なので、彼らがそれぞれの国に持ち帰って注文につながることを期待しています。注文数が増えたり、船便を利用したりすれば原価は下げられます」
これからの目標を尋ねると、中村氏は生き生きと野望を語った。
「すべてのジャポニカ学習帳を値上げせずに水平開きノートに変えてほしいと思っています。ショウワノートさんも以前は乗り気だったのですが、うまくいかずに消極的になってしまいました。国内のノートメーカーにも声をかけていますが、みなさん消極的ですね」
聞けば、高価な特注機械を使わなければつくれない水平開きノートは、そこまでして利益が出るのか分からないと懸念され、なかなか着手する企業が現れないという。そこで中村氏が見据えるのが、海外展開だ。
今回のアイルランドのようにノートを受注して売るのではなく、古くからの友人が開発した強度の高い接着剤をドイツに輸出したいという。
「欧州の既存機械を改造して、この接着剤を使えば、水平開きノートをつくることができます。すでにドイツ側と話をしていますが、国内と違って海外は積極的な姿勢ですよ」
衰退している出版業界では、人と同じことをしていては生き残れないと中村氏。80歳を迎えてもなお現役バリバリだ。海外展開を共に目指すパートナー2人も70〜80代で「3ジジイでやるのよ」とユーモラスに語っていた。まさかのヒットから7年、遠い異国にも届き始めた水平開きノート。今後の展開にも目が離せない。
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