中国製BEVは今後どうなるか 避けられない現実:池田直渡「週刊モータージャーナル」(6/6 ページ)
深刻なバブル崩壊を迎えている中国では、2022年にBEVへの補助金が終了した。今後BEVを生産するメーカーの行方は。
日本よりも深刻なバブル崩壊を迎えている中国
そもそも中国はかつての日本よりはるかに深刻なバブル崩壊を迎えている。
総債務で7000兆円とする報道もあり、今後BEVを生産するメーカーへの補助金をこれまで通り支出できるかどうかの見通しは絶望的でもある。
現実の話として、既に22年にはBEVへの補助金が終了した。そして人類史上に例のない巨額バブルの崩壊で、中国経済そのものが非常に厳しい状況に見舞われるだろう。既に地方自治体の財源は枯れており、警察や消防というエッセンシャルワーカーの給与まで滞り始めている。
その経済下で、過当競争にあり、目ぼしい技術を持たない平凡なBEVメーカーは、補助金打ち切りの影響で経営破綻が相次いでいる。このまま事態が進行すれば、業界のほとんどが“焼け野原”になる可能性は高い。ただし、当然ながら中国政府が国際競争力があると見た一部のメーカーに対してのみ、政府援助は続いていくだろう。それはおそらくBYDということになるだろう。あるいはそれに加えて2、3社が生き残るのかもしれない。
そうして生き残った中国のBEVメーカーに対して、米国はインフレ抑制法で、欧州は国境炭素税でそれらを叩くつもりでいるようだが、果たしてどうなることか。
筆者はこれまで、特にBYDの出来について、高い評価を聞くたびに、今の中国の自動車メーカーについては、製品だけ見ていても分からないところが多いのではないかと思ってきたし、過去の記事でもそれを伝えてきた。中国経済がこれだけ深刻な状況の中で、一企業の行く先など嵐の海の小舟のようなものである。それが生き残るか沈むかは、神のみぞ知るとしか言いようがない。
中国をあがめ奉ってきた人々には、もうとっくに見渡せていた中国のこの現状に、なぜ目をつぶってきたのかを問いたい。
20年1月の記事『2020年の中国自動車マーケット(前編)』『2020年の中国自動車マーケット(後編)』で書いた内容は、時事性がいささか古い部分はあったとしても、今日の流れをほぼ正確に書いている。そしてこれは19年の中国関連ニュースをチェックしている間にまとまった視点である。4年前にはもう見えていた話だと思う。よろしければ、今回の記事とあわせて、当時の記事も読んでみていただければと思う。
筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミュニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う他、YouTubeチャンネル「全部クルマのハナシ」を運営。コメント欄やSNSなどで見かけた気に入った質問には、noteで回答も行っている。
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