「サントリー生ビール」が売れている ヒットの背景に“違和感”あり:経済の「雑学」(2/4 ページ)
4月に登場した「サントリー生ビール」が売れている。その要因として、味わいやマーケティングなどが挙げられるだろうが、筆者は「パッケージデザイン」が気になった。どういうことかというと……。
100種類の中から選ぶ
ビールのデザインを決める際、複数の案の中から選ぶことが多い。サントリーの開発担当者に聞いたところ、一般的には10種類ほどの中から選ぶという。しかし、サントリー生ビールは違う。デザイナーから提案されたデザインは、100種類ほどあったそうだ。
単純に10倍だからスゴいとか、数が多いからエラいといった話ではない。ビールにはビールにあった王道のデザインがある。「このタイプのビールには、こういったデザインがいいよね」といった感じで、ある程度の型が決まっている。デザイナーはその枠の中で、デザインをつくっていく。ということもあって、選びに選び抜かれたモノの中から、開発メンバーはパッケージのデザインを決めていくのだ。
一方、サントリー生ビールは、そうした枠を取っ払った。100種類の中には、いわゆる定番のモノがあったり、これまで見たことがないモノがあったり、洗練されている(またはされていない)モノがあったり。そこから「このデザインはこっちの方向性だよね」「これはあっちの方向性かな」といった具合に、“方向性”というキーワードでふるいにかけていった。
その後も議論を重ねていくうちに、最終候補のデザインが決まりつつあった。開発メンバーは文字の大きさやフォントなどを決めていく。読者の中には「デザインを決めることって、大変そうだなあ。いま店頭に並んでいるデザインは、理想の方向性の中から選ばれたのね」と思われたかもしれないが、話はまだまだ続く。
絞りに絞り込まれたデザインを目の前にして、開発メンバーの中からこんな声が出てきたのだ。「このデザインは、ビールに求められる堂々としたデザインである。しかし、本当にそれでいいのか」と。最終案に残ったデザインであれば、スーパーやコンビニで並んでいるビールの“仲間”に入るかもしれない。しかし、消費者はこのように感じるのではないか。
「同じようなビールが並んでいるよね」――。
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