新興SNS「スレッズ」は「X」に勝ち目なし? ブームはなぜ沈静化したのか:世界を読み解くニュース・サロン(3/3 ページ)
新興SNS「スレッズ」の利用数が伸び悩んでいる。その背景要因を考察する。
Instagramユーザー数世界一「インド」で伸び悩み
スレッズに話を戻す。あまり使う理由がないスレッズだが、スタートダッシュは衝撃的だった。もっとも、スレッズのダウンロード数が公開後すぐに爆発的な伸びを見せた裏には、ある意外な国の存在があった。インドだ。
そもそもスレッズは、米メタが提供するインスタグラムと紐づけられている。このため、インスタグラムのアカウントを持っている人であれば新規登録の作業も必要なく、あっという間に簡単にアカウントを作れてしまう。事実、スレッズのダウンロード数はインスタグラムのユーザーが圧倒的に多い。
そしてインスタグラムの登録者数を国別に見ると、インドが圧倒的に多いのである。その数は2億3000万ほどで、2位は米国で1億4000万人となっている。
インド人はスレッズのユーザーの約32%、全ユーザーの3分の1を占めている。だがそのインド人がこのアプリにハマらなかったことで、利用時間も減り、登録者数も頭打ちになった。彼らのニーズに応えられていない可能性が高い。
Xは収益化開始 スレッズ勝利の鍵は独自機能か
Xは、マスクがさまざまな仕様を変えるなどして混乱を生んできたが、実際はユーザー数を伸ばしている。マスクは7月28日に投稿し、グラフを示して、Xのユーザー数が世界で過去最高の5億7000万人になったと明らかにしている。
しかもXの国ごとのユーザー数を見ると、1位の米国、2位の日本に次いで、3位のインドには2700万人の利用者がいるとされる。そしてこの数は、これからも増加していく気配がある。
主な理由は、Xの収益化だ。世界中で人気のアカウントを対象に、Xから広告収益を分配するようになっている。2月に事業を発表した際には開始時期が明らかになっていなかったものの、8月に入り、突如始まったことでインドで大きな注目を浴びている。
日本でも2ちゃんねる(現5ちゃんねる)の管理人を務めていた、ひろゆきこと西村博之さんが約36万円の広告収益の振り込みがX側からあったと投稿し、話題になった。
スレッズが新たな独自の注目機能でも発表しない限り、現時点では、スレッズに勝ち目はなさそうだ。
筆者プロフィール:
山田敏弘
ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『死体格差 異状死17万人の衝撃』(新潮社)、『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)がある。
Twitter: @yamadajour、公式YouTube「SPYチャンネル」
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