“東芝の念願”TOBが新たな苦難の始まりになる理由(1/3 ページ)
日本産業パートナーズ(JIP)などによるTOBが始まり、上場廃止に向けて動き出した東芝。世間を震撼させた不正会計発覚から8年。上場廃止を選ばざるを得なくなった一連の経緯に加え、TOBの行方と今後の見通しを考察する。
アクティビスト(物言う株主)たちに翻弄され迷走を続けてきた東芝ですが、いよいよ日本産業パートナーズ(JIP)などのジャパン連合によるTOB(株式公開買い付け)が始まり、経営の主導権を取り戻すべく年内の株式非公開化に向けて動き出しました。世間を震撼させた不正会計発覚から8年。最終的に上場廃止を選ばざるを得なくなった東芝迷走の流れを振り返りつつ、TOBの行方と今後の見通しを展望します。
リーマンショックから始まった迷走 日立と明暗
東芝迷走の始まりは一般的に、2015年の不正会計発覚とされていますが、その根本原因を作ったのはさらに遡ること7年、08年リーマンショックによる巨額赤字への対応にあったと考えます。
09年3月期決算における東芝の赤字額は3435億円。この年、東芝以上の巨額赤字7873億円を計上したのが創業来のライバル企業である日立製作所でした。この時、日立は自社の構造的な問題点を反省して多額の損失処理で膿を出し切ると同時に、ITおよび社会インフラ事業への経営資源の集中を図り、長期経営方針から距離のある事業や不採算事業の売却・撤退を徹底しました。
東芝はといえば、経営環境の激変に対する危機感に乏しく、日立のような抜本改革ではなく問題を先送りする形で目先の数字をつくることに終始。収益至上主義に明け暮れることになるのです。
その結果が、同時に始まったトップの暴走による不正会計を生み出したといえます。同社が組織的に行った利益の水増しは、08〜14年度の累計で2248億円。「集中と選択」で抜本改革をなし得て現在8兆円を超す時価総額に至った日立、迷走の末、2兆円弱に低迷を続ける東芝。結果は歴然と表れています。
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