銀座→郊外の移転で大成功 92歳の「最強の鉄人」道場六三郎氏はいま:あの話題は今(1/4 ページ)
「最強の鉄人」道場六三郎氏が、郊外で新たなチャレンジを続けている。銀座から郊外の庶民派スーパー横に移転した「懐食みちば」、さらには焼肉店「肉匠みちば」をオープンし、連日客足が絶えない。
あの話題は今:
かつて一世を風靡した(ふうび)した商品やサービスはなぜ生まれ、その後どうなったのか? また、話題になった企業の取り組みは、現在どう進化しているのか。流行の背景、ビジネスとして成功した理由、生き残り策などに迫る。
1990年代、フジテレビ系で放映していた伝説の料理対決番組『料理の鉄人』で「最強の鉄人」として君臨した、道場六三郎氏を覚えているだろうか。道場氏は次々と現われる手ごわい挑戦者を退けて、84.6%という驚異的な通算勝率を誇った。作業の途中、毛筆で御品書きを書くシーンも印象に残っている。
『料理の鉄人』は「キッチンスタジアム」なる収録用の厨房を、鉄人用と挑戦者用として2セット用意。その日・その場で発表したテーマ食材を使った料理を、双方が1時間の制限時間内に何点か即興で制作していく。その出来栄えを審査員団が採点して、勝者を決めるルールだった。「和の鉄人」として出場した道場氏は、西洋料理の食材であるフォアグラ、キャビア、中華食材のピータンといったさまざまな食材を自在に調理し、「食材に国境なし」を実践しながら人気と地位を確立していった。
2005年には厚生労働省から「現代の名工」として表彰された道場氏。92歳となった現在も、21年に始めたYouTubeチャンネル「鉄人の台所」に98本の動画を投稿するなど精力的な活動を見せている。同チャンネルの登録者は17.9万人(8月29日時点)を数え、道場氏流の家庭料理の奥義を伝授している。
道場氏は銀座に「銀座ろくさん亭」「懐食みちば」の2店を経営していたが、コロナの外出自粛の影響を受けて後者を閉店。8丁目にあった「ろくさん亭」を、6丁目の「懐食みちば」があった場所に移転している。
郊外の「道場ファン」狙い? 2月に松戸へ移転
さらに、千葉県松戸市へ「懐食みちば」を移転する形で、23年2月23日に再オープン。松戸近辺を走る常磐線・武蔵野線・新京成線の各沿線は、高度成長期からバブル期にかけ、東京都下の地価高騰によるドーナツ化現象によって、郊外にマイホームを求めて移住した40代以上の人が多く住んでいるエリアだ。『料理の鉄人』を視聴して道場ファンになった人も多い地域といえる。銀座までわざわざ外食に出掛けるのは大変だが、家の近くならばぜひ行ってみたいと考える、道場ファンをターゲットとしたのだろう。
松戸の新生「懐食みちば」は、松戸駅西口に構える商業施設「KITE MITE MATSUDO (キテミテマツド)」の地下1階にある。19年に営業を開始したキテミテマツドは、前年まで伊勢丹松戸店として営業していたビルにあり、松戸市民にはよく知られた場所だ。
キテミテマツドの地下1階には、大手スーパー「ロピア」がメインのテナントとして入居している。「懐食みちば」は、まるで隠れ家といった体でロピアの片隅でひっそりと営業している格好だ。
関連記事
- 「生ビール190円」の原価率は85%? お客が3杯飲んでもしっかり利益が出る仕組みとは
「生ビール1杯190円」という看板を見かける。安さでお客を引き寄せる戦略だが、実は隠されたメリットもある。どんな狙いがあるのか。 - 「かつや」のシェアは60%も!? コロナ禍に負けず、とんかつ・かつ丼市場で圧倒的強さを誇る秘密とは
コロナ禍で多くの外食企業が苦戦している。一方で「かつや」は大健闘しており、筆者の試算ではとんかつ・かつ丼市場におけるシェアが6割近くにもなるという。その強さの秘密とは?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.