試作段階の日本酒を販売して、どうなった? 「月桂冠」に反響を聞いた:経済の「雑学」(4/4 ページ)
日本酒の老舗ブランドとして知られる月桂冠が、新プロジェクト「Gekkeikan Studio(ゲッケイカンスタジオ)」をスタート。どんなプロジェクトなのかというと……。
見えてきた2つの課題
同プロジェクトの目的は売り上げを伸ばすことではなく、これまでにない新たな日本酒をつくり、ブランドイメージをアップデートさせること。それを踏まえ、2つの課題が見えてきていると大倉氏は指摘する。
「1つは、お客さまから定量的なフィードバックを得るのが難しいこと。現在は『フレッシュ』『濃厚』『酸味のある』『華やか』などのキーワードを並べて、購入した日本酒を飲んで『良い』と感じた印象、あるいは改善してほしい印象を選んでくださいといったアンケートを取っています。ただ、味わいをどう改善してほしいかを具体的に示すことは、消費者の方にとっては難易度が高いようでした。
現状はチェック項目の回答よりも自由記入欄のコメントを参考にしながら、最終的には私たちで方針を決めている状態です。ただ、最近はリアルの日本酒イベントが増えており、そこで消費者の方に試飲していただきつつ、お話できる機会が増えています。そういった場で質問しながら対話すると、具体的な改善ポイントを引き出しやすいと感じます」
そして、もう1つの課題は「完成度が高すぎること」だという。
「言い方を変えると、保守的すぎるのではないかと。これまで世の中になかったイノベーティブな日本酒を生み出したい狙いがあるにもかかわらず、おいしさを優先してしまっている気がします。アルコール度数が極端に低い、健康文脈を打ち出すなど、失敗してもいいのでチャレンジを増やしていけたらと」
現在は「no.4」の開発に着手しており、23年中に発売予定だ。すでに完売となった「no.1」「no.2」「no.3」を飲みたいという声もあり、再販も検討している。だが、同時にそれらを進化させることも重要であり、進化版の販売も継続したいと大倉氏は展望を話した。
ゲッケイカンスタジオの商品は広く流通しないことから、ブランドイメージを変えるインパクトは少々弱いかもしれない。しかし、その取り組みを知ると「パック酒に強い月桂冠」のイメージは変わるはずだ。コンスタントに商品をつくり、届けていく継続性が求められる気がした。
写真提供:月桂冠
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