なぜ「半額ショップ」はイマイチなのに、絶対王者オーケーは伸びているのか 「安売り」の手法に違い:小売・流通アナリストの視点(2/4 ページ)
最近「半額ショップ」という新しい業態の小売チェーンが各地で勃興している。値上げが相次ぐこのご時世、多くの消費者の支持を得られるかと思いきや苦戦気味だ。そこにはある盲点があった。
消費者が「安い」と思うロジック
そもそも、消費者が安いかどうかを判断する場合、価格の絶対値が低いことのみをもって「安い」と判断しているとは言い切れない。例えば、誰もが知るナショナルブランド商品(希望小売価格200円)を半額の100円で売っていれば、安いと感じるだろう。しかし、聞いたこともないメーカーの商品を半額の80円として並べて売っていても、絶対額の安さで優るノンブランド商品を買うかといえば必ずしもそうはならない。
多数派の消費者は、絶対額ではなくコストパフォーマンスが高い方を選ぶ。特に日本の消費者はナショナルブランド信仰が強く、プライベートブランドがこれまであまり浸透しなかったという実績もある。「安物買いの銭失い」という言葉もあるこの国では、コスパを判断できない安さは信用されない傾向があるのだ。
行ってみると分かるが、半額ショップの商品は、コスパが計測できない商品が大半を占める。半額ショップはさまざまな理由で余剰在庫となった商品をまとめて仕入れてくるため、多種多様なメーカーの商品を混在させて売っている。その商品の多くは、希望小売価格自体のコスパを判断することが困難であり、その半額といわれても得なのか損なのかがよく分からないのである。
オーケー独自の「コスパ」アピール術
この点でいえば、コスパを強くアピールした店作りをしているのが、ディスカウント型スーパーの最大手・オーケーだ。顧客満足度ナンバー1というタイトルホルダーであるオーケーは、加工食品や生活雑貨などナショナルブランド商品の存在感が大きい商品に関して、「希望小売価格の〇割引き」など、コスパの根拠を詳細に表示。そのため、売り上げが6000億円弱と業界有数の大手スーパーでありながら、プライベートブランド商品をほとんど扱わない。プライベートブランドでは消費者がコスパを判断できないと考えているからだ。
こうした詳細な説明の積み重ねが「オーケーはコスパがいい」というブランドにつながっている。そのためカートによるまとめ買いという大量購入が当たり前となり、オーケーは同業他社を圧倒する集客力を獲得。1店舗あたりの売り上げが約40億円というのは、上場スーパー各社と比較してもダントツの実績となっている(図表1)。
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