なぜ、トヨタは「センチュリー」をSUV化したのか 発表会の壇上にヒント?
トヨタ自動車が発表した、最高級車「センチュリー」の新型モデル。その発表会の壇上にはセンチュリーだけでなく、クラウンやアルファードなども並んだ。その背景には何があるのか。
トヨタ自動車が発表した、最高級車「センチュリー」の新型モデル。静粛性やデザインを踏襲しながら、事前のうわさ通りSUVモデル、プラグインハイブリッド車(PHV)だった(詳細記事)。センチュリーそのものに注目が集まる一方、発表会では、販売を継続するセダンタイプのセンチュリー、クラウン、アルファードも壇上に並んだ。その背景には、トヨタの製品ラインアップイメージの変化があるようだ。
センチュリーといえば、専属のドライバーが運転し、後部座席にオーナーや客が乗車する「ショーファーカー」だ。初代モデルは1967年〜97年、2代目は97年〜2017年まで販売。現行のセダンは18年、3代目として登場したばかりだ。
そんな中、SUVタイプを投入する狙いは何か。自動車ジャーナリストの桃田健史氏は「ショーファーカー市場が世界的に変化する中で、センチュリーも変わるべきタイミングだったといえる」と指摘する。
トヨタによると「近年では移動時間をより有効に活用し、車内での休憩や、オンライン会議に参加するなど、ショーファーカーに対するニーズが多様化している」という。
「トヨタとしては、旧来型ショーファーカーであるセンチュリー(現センチュリーセダン)を頂点とする製品ラインアップイメージではなく、クラウンFCEV(燃料電池車)、アルファード・ヴェルファイアとセンチュリーを同じ領域で捉えている」(桃田氏)
今年6月、新型「アルファード・ヴェルファイア」の発表会で、トヨタのサイモン・ハンフリーズ執行役員は、豊田章男氏のこんなエピソードを紹介している。
「2004年、彼(豊田氏)が役員だった頃、セダンのショーファーカーからアルファードに乗り換えました。理由は『ワークスタイルに合っていたから』です。広い車内でゆったり仕事ができる。会議の合間にくつろげる。必要ならば着替えだってできる。アルファードは完璧な選択肢でした」
ハンフリード氏の言葉からは、ショーファーカーとしての選択肢を多様化させる考えが見られた(SUVタイプの新型センチュリーを予告したのもこの発表会でのことだった)。今回、新型センチュリーの発表会で、壇上にセンチュリー以外のクルマが並んだ背景には、こうした多様性があるのかもしれない。
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