全く違う、若い世代のための「センチュリーSUV」 開発陣が「広さ」を突き詰めたワケ(1/2 ページ)
トヨタ自動車が世界初披露した、高級車「センチュリー」のSUVモデル。開発が進められた背景には、前社長・豊田章男氏のある一言と、それを受けた開発陣の試行錯誤があった。
「若い世代に向けた、これまでとは違う新しいセンチュリーが欲しい」──。トヨタ自動車が世界初披露した、高級車「センチュリー」のSUVモデル。開発が進められた背景には、前社長・豊田章男氏のそんな一言があった。
センチュリーは日本を代表するショーファーカー、つまり運転手付きのクルマだ。これからの若い世代が後席に乗る人となったときに、求められるセンチュリーのあるべき姿とは? 開発陣はかなり頭を悩ませたというが、最終的に「The Chauffeur」のコンセプトのもと、後席に乗る人のことを最優先に考えた設計にすることになった。
多様化する車内での過ごし方
これまでのセンチュリーに乗っていた人たちと、これからセンチュリーに乗るであろう若い世代の大きな違い。それがセンチュリーでの移動時間での過ごし方だ。「近年では、移動時間にくつろぐ、仕事をする、ゆっくり眠るなど、その過ごし方は多様化しています。こうしたさまざまなニーズに対応する室内空間が必要でした」(開発担当者)
現行のセダン型の前後席間距離が1135ミリメートルなのに対し、SUVモデルは1220ミリメートルと広くなっている。これを可能にしたのが、新開発したV6 3.5L プラグインハイブリッドシステムだ。
「現行のセダンモデルに搭載されているV8 5.0Lハイブリッドシステムは、エンジンが縦置きです。さまざまなニーズに対応する室内空間を作るには、今よりも広くすることが絶対条件で、縦置きから横置きにしたいと考えました」(開発担当者)。しかし、その当時は該当するパワートレインが社内になく、新しく開発するに至ったという。
新開発したV6 3.5L プラグインハイブリッドシステムは、センチュリーらしい品格に必要な静粛性と力強い加速性能を両立。日常生活ではBEV(電気自動車)、長距離移動やいざというときにはHEV(ハイブリッド車)として走行可能だ。
新しいパワートレインは思わぬ副産物も生んだ。「これまでのセンチュリーはショーファーカーということもあり、自分で運転するクルマではありませんでした。ですが、後席に乗る人の乗り心地を中心に考えたパワートレインの設計により、オーナー自身が運転するドライバーズカーとしての運転しやすさも生まれました」(開発担当者)。ドライバーズカーとしての新たな側面を狙ったわけではなく、あくまで乗り心地の良さを突き詰めていった結果だという。
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