西武池袋ストを「無意味」だと言った人へ “小さき声”を過小評価すべきでない理由:働き方の見取り図(2/4 ページ)
ストライキやSNSでの発信――近年、個々の“小さき声”がきっかけとなって、長い間岩盤のように固かった理不尽なルールや慣例に穴が穿たれる事例が増えている。“小さき声”がこれからの職場に与える影響とは――。
ネットに埋もれる“小さき声”の力
大手広告代理店の電通に勤務していた高橋まつりさんが自ら命を絶った痛ましい事件も、本人がツイッター(現X)に残した“小さき声”は、過労やパワハラにさいなまれた当時の辛い心境を伝える生の声として、今も多くの人々の心を突き刺しています。
そのとき発せられた“小さき声”が働き方改革の推進、引いては約70年ぶりの労働基準法改正による長時間労働是正へとつながっていきます。夜遅くまで残業していても「そういうものだから」と疑問さえ抱かなかったかつての風潮は、多くの職場で薄まりつつあります。
待機児童の問題も過労死の問題も、近年突如表れたわけではありません。苦しい思いをしてきた人たちはずっと以前から存在し、悲鳴を上げていました。しかし、勇気を出して声を上げても社会に届くことはなく、メディアが取り上げたとしても、やがてかき消されていきました。
しかし、インターネットが生活インフラとして定着し、子どもたちまでスマートフォンというデバイスを持ち、SNSで誰もが不特定多数の人たちと双方向で直接情報をやりとりできるネットワーク社会が構築されたことが、明らかに潮目の変化をもたらしています。
今は、インターネットとさえつながっていれば、個人が完全に切り離されることのない脱孤立化状態が実現されました。元自衛官の五ノ井里奈さんが性暴力を受けた事件も、本人が勇気を振り絞って“小さき声”を発したYouTubeが生の声を社会に届け、被害が明らかになったのです。
しかも、データが削除されない限り、生の声はインターネット上に残り続けます。今はまだかき消されている声も、やがて同じ思いを心にためる人たちが増えるにつれ、社会の認識が少しずつ「そういうものなのか?」と疑問形に変わっていきます。そのとき、かつて発せられた“小さき声”は、当時のままの生の声として再発見され、社会に影響を与えることになります。
関連記事
- 台風でも出社……テレワークできない企業が抱える3大リスク
コロナ禍を経て一度は根付いたテレワークだが、出社回帰が急速に進んでいる。ワークスタイル研究家の川上敬太郎氏は、テレワーク環境を整備していない企業が陥る3つのリスクを指摘する。 - 年間の通勤時間は休日20日分に相当 テレワークが生んだ3つの課題
コロナ禍でテレワークが市民権を得たが、出社回帰の動きが鮮明になっている。オフィス出社か在宅か、はたまたハイブリッド型か――。最適解はどこにあるのか。 - 「週休3日」の前に……「消えている有給」こそ問題視すべき理由
政府は6月に発表した骨太方針で「選択的週休3日制度の普及に取り組む」と発表した。週休3日制の導入を表明する企業も出てきている。しかし、週休3日制は、本当に望ましい休み方だと言えるのか。 - ビッグモーター不正 忖度した「中間管理職」は加害者か被害者か?
会社が組織ぐるみで不正を行った場合、トップの意思決定者と不正を実行した社員との間に位置する中間管理職は、加害者か被害者のどちらになるのか――。上司に盲目的に忖度する中間管理職は、企業を滅ぼしかねない存在でもあると筆者は指摘する。 - ジャニーズ性加害、粉飾決算……なぜ組織は不正を止められないのか 背後にある“3つの理由”
会社組織は、なぜ不正行為が生じた際に自浄作用を働かせ、自らの手で改善することができないのか。背景には3つのキーワードが関係しているという。ワークスタイル研究家の川上敬太郎氏が解説する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.