部下に気を遣いすぎて疲れる上司 「心理的安全性の意味」を誤解している?:逆に「対人不安」に(1/2 ページ)
最近の職場でよく見られる心理的安全性への誤解の例を挙げながら、本当の意味での心理的安全性につながる職場でのコミュニケーションを紹介します。
心理的安全性という言葉はここ数年で、瞬く間に日本の職場に浸透しました。筆者が開発を担当する管理職向け研修でも「心理的安全性を意識している」という声を頻繁に聞くようになりました。
心理的安全性とは、自分の考えや気持ちをチームの中で誰に対しても安心して発言できる状態のことです。企業でのハラスメント対策やエンゲージメント向上などへの注目を背景に、安心して働ける職場づくりへの関心が高まっていると考えられます。
一方で、研修での管理職の方々の会話をよく聞いてみると「心理的安全性を高めなければと思うと、部下の言うことを否定できず気を遣う」といった悩みを吐露する人もいます。 また、若手社員向け研修で部下の側の話を聞いてみると、「上司は話は聞いてくれるしいい人なんだけど、話してもあんまり状況が変わらない気がする」と、やや諦めムードの人も散見されます。
現代のチームにおける心理的安全性の重要性を指摘した米国の研究者、エイミー・エドモンドソンは「心理的に安全な職場では『対人関係の』不安に人々が悩まされることはない」*と自著の中で言っていますが、皆さんの職場はどうでしょう? 若手社員に気を遣うあまり、上司の側が対人不安にさらされてはいませんか? 気を遣われた部下の側は、本当に言いたいことが言えているでしょうか?
ここでは、最近の職場でよく見られる心理的安全性への誤解の例を挙げながら、本当の意味での心理的安全性につながる職場でのコミュニケーションを紹介します。
*『恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす』(エイミー・C・エドモンドソン/英治出版/2021年)より
心理的安全性とは
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