トヨタはセーフで日産はアウト! 「ジャニーズリスク」と大企業はどう向き合うか:スピン経済の歩き方(6/6 ページ)
契約を打ち切ったら「いじめ」と叩かれて、継続をしたらしたで「人権意識がヤバい」と叩かれる――。ジャニーズの問題で、頭を抱えている企業の担当者も多いはず。いわゆる“ジャニーズリスク”と企業はどう向き合えばいいのか。
タレントに依存する時代ではない?
よく業界では「トヨタの危機管理はスゴい」などと言われるが、木村さん、香川さんという過去のタレント不祥事による広告トラブルを経験した結果、「トヨタイムズ」のような方針になったとしたら本当にスゴいことだと思う。
ジャニーズタレントや有名人を広告に起用すれば、確かにファンが見るし、話題にもなるので「効果」がある程度得られるように思う。しかし、それが実際に商品の購買に結びついているのか、という問題は以前から議論を呼んできた。
だから、トヨタはオウンドメディアに切り替えた。ある程度、ブランドも知名度もある企業ならば自前でメディアをつくって情報発信をしたほうが、芸能事務所に莫大な契約料を支払わなくていいし、「タレントの不祥事で広告打ち切り」なんてことに労力を奪われない。コスパを考えれば極めて合理的な判断だ。
ちょっと前には大正製薬が、「カズ」こと三浦知良選手の広告起用をめぐる契約トラブルがあって、話題になったばかりだ(参照記事)。もはや大金を積んでタレントを起用して、そのイメージに「依存」してモノを売る、といったビジネスモデルが崩壊しつつあるということだ。
「ジャニーズ外しドミノ」が広がっていけば、大企業の多くは「ジャニーズを広告に起用しても、しなくても、そんなに売り上げが変わらなくない?」という“不都合な真実”に気付くはずだ。そうなると、トヨタのような判断をする企業も増えていくだろう。
「数字」をもつタレントで大金を稼ぐという、広告ビジネスは大きな転換期を迎えているのかしれない。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。窪田順生のYouTube『地下メンタリーチャンネル』
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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