サンリオ驚異のV字回復 いかにして「ハローキティ依存」を脱したのか:辻社長インタビュー【前編】(2/3 ページ)
長らく業績悪化に直面していたサンリオが、V字回復を見せている。その背景には、2020年7月に社長へ就任した辻朋邦氏が主導した組織改革がある。辻社長は、当時のサンリオが抱えていた数多くの課題を、どのように解決に導いたのか。
これまでの「刷り込み」だけでは、もう戦えない
昨今はエンターテインメントのタッチポイントが非常に多様化している。ハローキティが人気を獲得してきた勝ちパターンが通用しなくなる中で、新たな手法への転換も必要だった。
「ハローキティを中心に、当社のキャラクターにとっての勝ちパターンは『刷り込み』でした。新たなキャラクターが生まれたら、商品化して手に取っていただき、知っていただく。弁当箱や財布、ポーチといったアイテムを展開して、生活に深く入り込んで思い出になっていくことで、認知や熱量を高めてきました。しかし、最近はテレビやゲームだけでなく、さまざまなコンテンツが世の中にあふれています。もはや商品を大量に出して、刷り込みながら人気を獲得できる時代ではなくなりました」
そこで、これまでなかったマーケティング部署を新設。プロダクトアウトから、マーケットインへと徐々に軸足を移していく。
「キャラクターのブランドを高めてグローバルで戦っていくためには、名前も重要な要素です。しかしながら、これまでのキャラクターには海外だと発音しにくいような名前もあります。そもそもキャラクターを考えるときに、グローバルの視点や市場の観点が抜け落ちてしまっていました。『女児向け商品の売り上げが悪いから、女児向けのキャラクターを作ろう』といった形で、場当たり的に考案することもありました」
マーケティング部署を設立してからは、しっかりとキャラクターのポートフォリオを作成し、長期的な観点でブランディング施策を検討できるようになっていった。
中期経営計画で掲げた「組織風土改革」も功を奏した。従来は個別最適/サイロ化していた各組織の壁を壊し、流動性を高めることでキャラクターの名前やデザイン、世界観からプロモーションの方法までを、部門横断的に検討できるようになった。
「ライセンスの取り引きを一つ取っても、これまでは部署内でとどまっていたところがマーケティング部署と一緒に行動して収益を拡大することが増えました。部内での連携も活発化しており、全社横断的なイベントでも成果が出ています」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
ドムドムハンバーガー驚異の復活 風向きを変えた「3つの出来事」
「このままなくなってしまうではないか」と悲観されていた、ドムドムハンバーガーが復活し注目を集めている。最盛期の90年代には全国400店以上にまで拡大したものの、閉店が相次ぎ30店舗以下に。しかし、2020年度から最終黒字に転じて息を吹き返し始めた。その背景には何があったのか──?
ブックオフ、まさかの「V字回復」 本はどんどん売れなくなっているのに、なぜ?
ブックオフは2000年代前半は積極出店によって大きな成長が続いたものの、10年代に入って以降はメルカリなどオンラインでのリユース事業が成長した影響を受け、業績は停滞していました。しかしながら、10年代の後半から、業績は再び成長を見せ始めています。古書を含む本はどんどん売れなくなっているのに、なぜ再成長しているのでしょうか。
店舗予算は「分かりません」 数字を知らないキャンディ店、社長はどう変えた?
店舗予算は「分かりません」「日々頑張ります」――アメ細工のパフォーマンスで若者から人気を得ている「PAPABUBBLE」だが、経営はアナログで行き当たりばったりだった。そんな中、4月に代表に就任したのは電通やゴンチャジャパンでマーケティングを極めてきた越智大志氏。就任後5カ月で、会社はどう変わったのか。
「Kawaii」文化の伝道者、サンリオが好調 世界で売り上げを伸ばすこれだけの理由
サンリオが好調だ。好調の背景には、外国人観光客による売り上げシェアの拡大がある。「Kawaii」文化の伝道者、サンリオが世界で売り上げを伸ばす理由は?
