サンリオ驚異のV字回復 いかにして「ハローキティ依存」を脱したのか:辻社長インタビュー【前編】(3/3 ページ)
長らく業績悪化に直面していたサンリオが、V字回復を見せている。その背景には、2020年7月に社長へ就任した辻朋邦氏が主導した組織改革がある。辻社長は、当時のサンリオが抱えていた数多くの課題を、どのように解決に導いたのか。
ユーザー参加型でデビューするキャラクターを決定
最も顕著な成果が「NEXT KAWAII PROJECT」だ。
ユーザー参加型で新たにデビューするキャラクターを決めるプロジェクトで、22年6月に開始した。社内デザイナーが考案した120を超えるデザインから、社員投票で25個のキャラクターを選抜。そこからユーザーが参加する「デザイン投票」「動画投票」「グッズ投票」の3ステップを経て、23年3月に「はなまるおばけ」のデビューが決定した。
「市場規模はどれくらいか、また国内で勝負するのか、海外でも展開するか。こうした点から逆算しながらキャラクターを創出できるようになりました。また、NEXT KAWAII PROJECTではファンの方を巻き込んで、熱量が高い状態でキャラクターをデビューさせられたこともポイントです。徐々にキャラクターがヒットする確率を高められていると手応えを感じています」
キャラ企業から総合エンタメ企業へ
同社では、キャラクターや製品・サービスにユーザーが触れている時間を「サンリオ時間」と定義。経営におけるKPIとして、21年から10年間で全世界のサンリオ時間を累計3000億時間以上に増やす目標を掲げている。そのためには、従来型以外のタッチポイントを増やすことが欠かせない。
そうした観点から、23年3月に子ども向け英語教材の「Sanrio English Master」をリリースした。サンリオならではの子どもを楽しませるノウハウや、専門家とともに実証実験をして得たエビデンスを基に開発したサービスだ。
「今回の中期経営計画を定めた目的として、ハローキティを中心としたキャラクター企業から、総合エンターテインメント企業に進化したいという思いがありました。娯楽と教育を掛け合わせた『エデュテイメント』のサービスとしてリリースしたSanrio English Masterもその一環です」と辻社長は説明する。
「エンターテインメントは衣食住のような生活必需品ではないため、いかに付加価値を生み出すかがポイントです。われわれが生み出す付加価値は、皆さんの笑顔です。通勤時間や料理をしている時間、あるいは何気なくボーっとしている時間など、まだまだ多くの人に笑顔を届けられるシーンはあると考えています。そうしたシーンを見つける、あるいはすでにあるタッチポイントを深めていく。あらゆる瞬間、あらゆる方にエンターテインメントと笑顔を提供して、ビジョンとして掲げる『One World, Connecting Smiles.』と企業理念である『みんななかよく』を目指していきます」
本記事では、中期経営計画を基にした組織改革の中から、サンリオの収益源であるキャラクタービジネスのアップデートや今後の展望に焦点を当てて解説した。後編の記事(9月13日公開)では、組織改革のうち人事面にフォーカスする。
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