「交通事故予防」「インフラ点検効率化」 生成AI活用を進める三菱電機、次なる一手は?:生成AI 動き始めた企業たち(1/2 ページ)
連載「生成AI 動き始めた企業たち」第9回は、三菱電機を取り上げる。独自のAI技術「Maisart」と生成AIを組み合わせることで、同社はどのようなサービスの開発を目指すのか――。
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連載:生成AI 動き始めた企業たち
生成AIがビジネスを大きく変えようとしている。従来のルールを覆す「ゲームチェンジャー」となり得る新技術に、企業はどう向き合うのか。生成AIの独自開発・活用に名乗りを上げた企業に構想を聞く。
これまでの掲載
日本IBM、サイバーエージェント、日立製作所、富士通、NEC
パナソニック コネクト、NTTデータ、情報通信研究機構(NICT)
今後の掲載予定
- 三菱電機(本記事)
- 村田製作所
※順不同、今後も追加予定
連載「生成AI 動き始めた企業たち」第9回は、三菱電機を取り上げる。同社は独自のAI技術「Maisart」(マイサート)ブランドを2017年から展開。この技術を用い、運転中のドライバーの生体情報から体調異常を検知して事故の予防に貢献する技術や、コンクリート表面のひび割れを自動検知しインフラメンテナンスの効率化を図る技術など、さまざまなサービス開発に応用してきた。
これまで蓄積してきた知見と生成AIを組み合わせることで、次はどのようなサービスの開発を目指しているのか――。回答者は同社上席執行役員・開発本部長の岡徹氏。
ビジネスへの影響 | 自社の強み | 競争優位性 | リスクと対処法 | ルール整備 | |
---|---|---|---|---|---|
日本IBM | 新ビジネスの創出と業務プロセスの大変化が起こる | 顧客の競争優位につながるユースケースに特化したAI | 最先端技術をIBMのオープンプラットフォームに取り込む | 情報漏えいなどを防ぐためにはガバナンス強化が必要 | 顧客向けAIプロジェクトでは社内AI倫理委員会で審査 |
サイバーエージェント | 従来のサービスの性能自体の向上につながる | 独自LLMを用いChatGPTのような対話型AIの開発が可能 | 競争よりも協力して日本独自の生成AIの発展を期待 | データ活用のための法整備を国全体で進める必要がある | 生成AIの業務利用についてガイドラインを策定 |
日立製作所 | 設備保守などを学習させ熟練者の技術伝承も可能になる | 毎年100件超のAIを活用したプロジェクトを推進 | 運用や保守に関する情報を学習した日立独自のLLMを開発 | 情報漏えいを防ぐため「出力内容の吟味」が必要 | 利用の判断基準を定めた業務利用ガイドラインを社内展開 |
富士通 | ホワイトカラーの仕事への影響が大きい | 人の振る舞いや表情を認識するAIなどに強み | 顧客業務に特化した生成AI開発と安心利用できる環境整備 | 社会的リスクにAI倫理影響評価ツールなどの手法を提案 | 従業員にeラーニングの受講を義務付けている |
NEC | 生成AIは「次なる産業革命」の「道具」になる | AI・自然言語分野の豊富な支援実績から培った知見に強み | 生成AIの利活用をフルスタックでサポートできる | 情報の出入力の制御が重要 | 秘密情報の取り扱いなどに着目し社内ルールを制定 |
パナソニック コネクト | 資料作成・企画立案など非定型業務でも活用可能 | 画像認識、生体データ分析・ロボティクスなどに強み | 早く広く生成AI活用を社内で促進 | 著作権などのコンプライアンスの課題と不適切な利用リスク | 生成AI利用に関する注意事項5項目を制定 |
NTTデータ | 新しいビジネスの登場も考えられる | 言語の生成AIでの技術的なノウハウに強み | 既存の強みを生かし、他社との差別化と強みを作っていく | リスクを詳細化し対処法を網羅する必要がある | 外部サービスの選定と生成指示について注意喚起した |
情報通信研究機構(NICT) | 人材不足など日本社会の重要課題で生成AI活用が進むと期待 | 大量の高品質な日本語学習データを蓄積済み | これまでの研究知見を民間企業に提供し日本の産業の底上げを狙う | 生成AIの副作用の抑制に柔軟に対応できる体制、技術の整備が重要 | 規定の手続きに則り研究者らが申請を行って承認を得て研究開発や利活用 |
三菱電機 | 専門知識がなくてもAIと対話しながら機器を操作できるようになる | さまざまな分野の現場データや機器の知見を生かしたAI技術を保有 | コンパクトな言語モデルで生成AIを活用する際の実用性と安全性を高める | 機密漏えい、権利侵害、輸出管理違反、虚偽情報などを対処 | 自社の生成AI利用環境やガイドラインを整備済み |
各社の回答(要約) |
Q. 生成AIはビジネスと社会にどんな変化をもたらすか
当社はこれまで、AIを監視カメラや工場機械など顧客に接するところで活用するため、17年から「Maisart(マイサート)ブランド」を立ち上げてAIの普及を推進してきました。また、AI倫理ポリシーやAI品質保証ガイドラインの策定し、AIを安心して使ってもらえるように努めてきました。
Maisartの代表的な特長は、処理能力が限られた機器にも搭載できるようにコンパクトなAIを実現したこと、機器やシステムなど製品の知見を生かして学習やデータ処理を効率化したことにあります。ChatGPTに代表される生成AIの登場によって、AIがより扱いやすい身近な存在になりました。生成AIをMaisartと連携させることで、人と機器の親和性がさらに向上すると考えています。
例えば、機器の操作やプログラミングは、これまで専門知識を持ったエンジニアが担当してきましたが、生成AIを活用することで、専門知識のない人でもAIと対話しながら機器を操作したり、プログラムを作成したりすることが可能になります。また、生成AIにトラブルシューティングなどの当社ノウハウを学習させ、機器やシステムに搭載することで、問題の解決策を顧客に即時に提示することが可能になります。
このように、生成AIによって製品やサービスの形態が変化し、より高い価値を顧客に提供できるようになると考えています。
Q. 自社のAI技術の強みは何か
当社はインダストリ、インフラ、ライフ、半導体など幅広くビジネスを展開しています。当社の強みは、さまざまな分野の現場データや機器の知見を生かしたAI技術(Maisart)を保有していることです。
例えば、作業分析の自動化があります。手作業による時間ロスやヒューマンエラーで製造現場の生産性が落ちてしまいます。AIが搭載された作業分析技術により、たった10サンプルのカメラ映像だけで作業分析を行い、今まで見つけられなかった小さな時間ロスやわずかな作業の違いに気付き、改善に役立てることができます。
今後これらの技術と生成AIを組み合わせることで、改善方法を作業者により分かりやすく提示することが可能となり、さらなる利便性向上が期待できます。
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