「被害者はお客さま」「不正見抜けず道義的責任」──損保ジャパンが“ビッグモーター問題”で示した見解と今後:広がる疑惑の目(1/3 ページ)
ビッグモーターによる不正請求問題で、損保ジャパンが「被害者はお客さま」などの見解を示した。当初、報道陣へのコメントがSNSで「被害者ヅラ」などと批判を浴びたが、会見では自社の非を認め、契約者などに謝罪した。
「被害者はお客さま」「不正を見抜けず道義的責任を感じている」──中古車販売大手ビッグモーター(BM)が損害保険各社に保険金を不正に水増し請求していた問題で、損害保険ジャパン(損保ジャパン)の白川儀一社長は、こんな見解を示した。問題発覚当初から関係が指摘されていた両社。当初、白川社長は報道陣の取材に「見抜けなかった」「(不正は)非常に遺憾」とコメントし、SNSでは「“被害者ヅラ”している」などと物議を呼んでいた。9月8日の会見では一転して自社の非を認める立場を示し、契約者への補償など、すでに始まっているものもある一方、「調査中」「未定」のことも多い。
白川社長が引責辞任 後任や時期は未定
同社はこれまで37人の社員をBM側に出向させていたことなどが判明している。白川社長は「過去から多数の出向者を派遣して、長期間深い取引関係にありながら、不正を見抜けず、営業重視で事故を起こしたお客さまの大切な車をBM社の修理工場に積極的に紹介してきた結果、使わなくてよかった保険を使ったことで等級ダウンという被害を発生させてしまったということ、多くのお客さまに大変なご迷惑をおかけしたことに、大きな責任を感じており、心からおわび申し上げる」と陳謝。「BM社の不正は許されることではないが、不正を見抜けなかったことには道義的な責任を感じている。少なくとも被害者といえるのは、何も知らずに紹介されて、入庫したお客さまだ」という見解を示し、自社にも不正の責任があることを認めた。
損保ジャパンは今回の問題に対応するため、「ビッグモーターお客さま対応室」を社内に設置。過去BMで修理した事案を再調査している。水増し請求が発覚した際は返金と等級訂正を行う他、BMに入庫した契約者が安全性点検などを行った際の費用を全額負担する方針を示している。
現在、損保ジャパンは外部の弁護士で構成する社外調査委員会が調査しており、詳細も今後判明するとみられるが、同社に関しては未定のことが多い。
その1つが後任社長だ。すでに白川儀一社長が引責辞任を表明しているが、後任や辞任時期、退職金などの詳細は現時点で未定となっている。
白川社長は1993年安田火災海上保険(現損保ジャパン)に入社。実業団でのソフトテニスチームでのプレーに専念するため、2003年に一度退社するも、復職した。経営企画部長などを経て22年4月に社長に就任。当時51歳での社長就任は社内では史上最年少で、就任時は「役員37人抜き」の大抜てき人事として注目を集めた。
BM社で判明している数々の不正を受け、白川氏は会見で契約者に謝罪した上で「自分が社長を続けると(会社が)もたない」と説明。会見に同席した親会社SOMPOホールディングスの櫻田謙悟会長は、辞任について「辞任は止められるものではないが、即刻辞任はダメだ」と伝えたものの、最終的に本人の意向を尊重したと明らかにした。
櫻田会長は「辞任してそこで責任がストップするわけではない。調査委員会の結果をもって、金額的なものが決着するだろう、従って辞任時期はこれから」とし、辞任時期や退職金の動向も現時点で未定との見解を示している。
社長ポストは空席のままだが、代表取締役には後任にSOMPOホールディングスの石川耕治常務が損保ジャパンの副社長と兼務する形で9月8日付で着任している。
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