「被害者はお客さま」「不正見抜けず道義的責任」──損保ジャパンが“ビッグモーター問題”で示した見解と今後:広がる疑惑の目(3/3 ページ)
ビッグモーターによる不正請求問題で、損保ジャパンが「被害者はお客さま」などの見解を示した。当初、報道陣へのコメントがSNSで「被害者ヅラ」などと批判を浴びたが、会見では自社の非を認め、契約者などに謝罪した。
浮き彫りになった利益偏重の姿勢
損保ジャパンは安田火災時代の1988年7月にビッグモーターと取引を開始し、35年間にわたってビジネスパートナーとして関係を築いてきた。BMには保険代理店としての機能もあり、代理店手数料などの収入は200億円にも及ぶ。そのうち、120億円を損保ジャパンが占めていたことも明らかになっている。
過去には株主だった(16年に全株売却済み)こともあり、BMとの関係が深かった損保ジャパン。取引額の規模から、同社はBMを保険適用箇所などの確認を現地確認ではなく、送信画像などで判断する「簡易調査対象工場」にも指定していた。
会見では22年初頭にはBM社員の内部通報により不正の可能性を認知しながら、BM側から再発防止策の提出と「組織的な指示ではない」とする社内調査の結果を受け、入庫を再開したことも分かっている。
白川社長は「疑義の追及に時間をかけるよりも、今後の被害拡大を防ぐため厳しい再発防止を条件に、(損保ジャパン契約者の事故車の)入庫を再開をすることが、これから入庫するお客さまにとっても、会社にとってもベターと判断した」「損保会社3社を代表して疑義を追及してきたため、(疑惑の追及によって)競合他社に現在の取引が大きくシフトする強い懸念を持っていたことも事実」とし「お客さまに思いが至っていない軽率な考えだった」と謝罪。損保ジャパン側の利益を追い求める姿勢が、BMの不正を助長させていたともいえる。
不正が見逃された根本原因の究明、出向社員の不正への加担の有無、社長ポストの後任、役員報酬を含めた現経営陣の責任、他社との取引……。外部弁護士が「調査中」ということもあり、不透明な部分はまだ多い。同社は弁護士が作成した報告書の提出があり次第、再度会見を開くと明言している。
現時点での不明箇所の多くは報告書の公表で明らかになるとみられる。19日には金融庁の立ち入り調査を控える中、今後も損保ジャパンの動向に注目が集まりそうだ。
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