物流を「コスト」と見なす人に欠けている視点:仙石惠一の物流改革論(2/2 ページ)
物流部門はしばしば「コストダウン」の標的になる。直接的な付加価値を生まないとみなされているからだ。しかし、その視点だけでは経営を誤った方向へ向かわせてしまうかもしれない。ロジスティクス・コンサルタントの仙石惠一が解説する。
物流は「結果」であるという認識
物流は付加価値を生まない「悪」であるという認識がある。確かに工場の中で運搬や在庫があると「それをなくせ」と号令がかかるものだ。それ自体は否定しないが、そのような結果を招いている要因をつぶすことの方が重要ではないか。
工程設計時に工程と工程を離してレイアウトを組んだために工程間運搬が発生したり、生産計画以上に資材を調達したために資材在庫が発生するのだ。その結果として、工場内で運搬用通路や保管場所が必要になる。
物流をなくしたければ、物流が発生しないような仕組みが必要だ。工場立地設計や、工場内レイアウト設計、調達業務や生産計画などのプランニングを見直すべきだ。
物流管理とは物流の発生源管理
工場における物流管理業務は一般的にものの運び方や配車手配、容器管理や運搬機器管理などの日常管理業務が中心だ。今発生している物流の管理としては重要な業務であることに変わりはない。
これらの業務は何かしらのKPI(Key Performance Indicator)とよばれる重要管理指標を用いてその効率を管理していきたい。
一方で、私たちが日常管理業務以上に力を入れて取り組まなければならないのは、物流の「発生源」を管理することだ(図3)。
調達方法を改善し、余分な在庫を削減する。適正な生産指示を提示することで、余分な完成品在庫を削減する。在庫削減を加速させ、外部倉庫への支払いを削減する。お金をかけずにできるところから工程間を直結化し運搬をなくす。
このような管理を工場内でしっかりと行っていくことこそが、真の物流管理だという認識を持とう。
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