生成AIの業務導入が失敗するワケ 新興ABEJAが提案する活用プロセスとは:生成AIスタートアップの挑戦(3/3 ページ)
独自のAIを開発し、企業のDX支援などを手掛けるABEJA。従来のDX手法に生成AIを組み合わせることで、どのような効果を生み出すのか――。
Q. 生成AIがもたらすリスクへの対処は
著作権においては、現在、日本はAIに特化した新たな法規制を行わないというのが基本的なスタンスで、既存の法律で取り締まられています。生成AIに関する著作権についても、生成AIにより生成された画像には、創作的寄与がない限り著作権が発生しないなど、法解釈がなされています。ABEJAでは、法に則った適切な運用を図るとともに画像生成AI案件において、生成した画像が著作権を侵害しないように、多方面から調査するメカニズムを設けて対策しています。
また、ABEJA Platformは、企業の機密情報や個人情報を取り扱う際に、データのマスク(匿名化)や高セキュリティ環境での取り扱いなどの対応を可能にしています。加えて「人とAIの協調の仕組み」により、出力結果に対し、人による補正を可能にしています。
ABEJAは19年7月に倫理や法務的観点から、AIに関する課題について討議する外部有識者からなる委員会「Ethical Approach to AI」(EAA)を設立し、議論を重ねています。
引き続き、EAAにおける倫理的、法的、社会的な側面からの活発な議論を、AIの開発および利活用に関する指針作りに組織的に活用していきます。
Q. 生成AIに今後どんなビジネスチャンスがあると考えるか
現在LLMは、そのインターフェースが自然言語となることから、業務プロセスに組み込みやすいDXの手法としても注目されており、DXの進捗(しんちょく)が著しくない企業においても大きな起爆剤になることが示唆されています。
加えて、ABEJAは、画像生成AI関連技術を代表する「Stable Diffusion」など、今後のデジタルクリエイティブに新たな可能性を与える画像生成AIの活用を組み込んでいくことが、ビジネスにおける生成AIのあり方をより実用的なフェーズに進めると考えています。画像生成AIの最新技術においても積極的にABEJA Platformに搭載することを視野に入れて推進しています。
テクノロジーにおけるブレイクスルーは迎えられたと考えており、これにより新たなビジネスモデルの創出も期待できると考えています。
実際、ABEJAの顧客企業において、多様でユニークな活用が実運用のフェーズに入ってきている事例も増加しています。将来的にROI(Return On Investment:投資利益率)が期待できそうな案件は、いずれも適切なBPRのステップが踏まれたものばかりです。
ABEJAは今後、各社と調整の上、可能な限りこうした事例を積極的に開示していき、多様な産業における活用に貢献したいと考えています。
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