生成AIの業務導入が失敗するワケ 新興ABEJAが提案する活用プロセスとは:生成AIスタートアップの挑戦(2/3 ページ)
独自のAIを開発し、企業のDX支援などを手掛けるABEJA。従来のDX手法に生成AIを組み合わせることで、どのような効果を生み出すのか――。
Q. 顧客はどんな恩恵を受けられるのか
ミッションクリティカル性の高い基幹業務に組み込み、本番環境においてゼロPoC(実証実験)で運用することが可能になります。
従来、ABEJAの事業モデルは、製造業におけるEMSに近い形態でABEJA Platformを核に、DXに必要な全工程をデジタル版EMSとして、多種多様な業種の顧客企業に対しサービスを提供しています。ABEJA Platformは、DX推進に必要な機能をそろえたソフトウェアの集合体であり、ABEJAの事業モデルにおいては、顧客企業の要望に応じた幅広いニーズに応えられる最先端の技術とノウハウをそろえた「工場」に位置付けられます。
「ABEJA LLM Series」も単体ではなく、このABEJA Platformに搭載して提供しており、ABEJAは顧客企業に対し、課題を整理し、どの課題をDXで解決したいのかコンサルし、ビジネスプランニングを行った上でABEJA Platform上で「ABEJA LLM Series」を含む必要なソフトウェアをピックアップし、企業のビジネスプロセスに組み込んで提供しています。
顧客企業にとって、より汎用的に活用いただくことが可能となるのは、この仕組みを採択しているためです。
Q. 自社のサービスの強みは
こうした仕組みにより、顧客の多様なニーズに幅広く対応でき、かつ人とAIが協調する「Human in the Loop」(※)の仕組みにより、PoC(実証実験)ゼロで、本番運用に持っていくことが可能です。
実際、すでに生成AIを実際の業務に活用し始めた顧客企業も存在しており、検討から運用までのスピードの速さも評価していただいています。
※人とAIが協調する「Human in the Loop」の仕組み:多くのAI導入企業は、実証実験を繰り返し行い、AIの精度を上げてから、本番環境に移行しようとしています。実証実験を繰り返すものの、本番環境に移行できないケースが少なくないのが実情で、60%を超える企業が実証実験にとどまるというデータも出ています。ABEJAでは、ABEJA Platformに「Human In the Loop」というアプローチを搭載(特許出願中)することで、データ量が少なくAIが効果的に学習できない、または高い精度を発揮できない初期段階より実運用を可能としています。
また、顧客企業に提供を進める中で、結局、生成AIの活用においても他のDXにおける課題と同様、BPR(Business Process Reengineering:業務改革)が極めて重要だと実感しております。
多くの企業においては、生成AIを既存業務プロセスに組み込もうとしがちですが、実際には業務プロセスの設計の見直しから始めないと、導入はもちろん活用することも難しいというのが現実です。デジタル版EMSを提供するABEJJAでは、LLMのみならず、まず既存業務と多面的に向き合い、BPRを適切に構築できるという点も顧客企業に評価していただくポイントです。
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