「本当にやばいと思った」 生成AIの衝撃とどう向き合うか、リーガルオン社長に聞く(2/3 ページ)
ChatGPTを始めとする生成AIの登場は、世の中に大きな変化と衝撃をもたらした。LegalOn Technologiesの角田社長は「ChatGPTを初めて試したとき『これは本当にやばい』と思いました」と話す。ビジネスの在り方を揺るがす生成AIとどのように向き合うのか、話を聞いた。
ChatGPTは「思っていたよりすごかった」
現在はLegalForceの利用企業が3000社以上に、21年にリリースしたAI契約管理システムの「LegalForceキャビネ」の利用企業が800社を超える。
前述した22年6月の資金調達後、製品の英語圏での展開を視野に米国の開発チームを発足。秋にはLegalOn Technologiesの米国法人を立ち上げた。米国法人のCEOが来日した際に「生成AIは本当にすごいし、米国ではリーガルテックの企業も生成AIを使ったサービスを出している」と伝えられ、角田社長は初めてChatGPTを自分で触ってみたという。
その時について、角田社長は「思っていたよりすごかった」「本当にこのままではまずいと感じた」と話す。
実は、それ以前からGPT2.5のニュースなどには注目していたという角田社長。共同研究している大学教授と議論した際にも「今の話題と言えば大規模言語モデルだ」「“それっぽい論文”を書ける」と紹介されたが、ビジネスには使えないのではないかと考えていたという。
角田社長は「“それっぽい”というレベルで、実際には内容の正確性が担保できないとすると、法務や契約の領域で応用するのは難しいと思ってしまっていたんです」と振り返る。しかし、自分でChatGPTを試してみて、その考えは180度変わった。これからビジネスの現場で威力を発揮するであろうこの技術を、自社の製品にも取り入れていかねばならないと考えた。
危機感から始まった開発
その後、米国チームを中心にさまざまなChatGPTの活用案をディスカッションした。製品への取り入れ方の方向性を定め、23年1月ごろに日本でもLegalForceにChatGPTを活用した機能を搭載するための開発チームを発足した。
「最初は危機感から動き始めたのですが、徐々に生成AIを活用してお客さまへの提供価値をいかに高められるかという議論にシフトしていきました」
当初から懸念のあった通り、最大の課題は、GPTによる回答内容の正確性が担保できないことだ。
この制約の中で生まれた機能が「条文修正アシスト」だ。LegalForceでは契約書をアップロードすると、一般的なリスクや抜け漏れがあると思われる部分を表示する。その際の修正案は、これまで社内の弁護士が作ったプリセットの文章を提案していた。ユーザーはそれを見ながら実際の文章に修正案の表現を整えていく必要があった。これが「条文修正アシスト」を活用することで、レビュー中の契約書の文章に沿った修正案を生成できるようになった。
「GPTにイチから条文を書いてもらうなどの使い方ですと、何が出てくるかわからないですし、利用者側からの入力内容に依存してしまうので、実務向けのプロダクトとして役立つものにはならないだろうと思います。一方、条文修正に活用する方法であれば、利用者はボタンを押すだけですし、回答の内容もあまりぶれないので実務に使えます」
契約書という機密性の高い情報を取り扱うため、セキュリティ面も課題だった。他社の事例やノウハウがまだほとんどない中での情報収集に苦労したが、10件ほど比較してデータポリシーに合ったサービスを選定した。
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