アップル「2030年カーボンニュートラル達成」の本気度 7年で何ができるのか?:本田雅一の時事想々(1/4 ページ)
アップルの新製品発表会で、ティム・クックCEOは、2030年までにカーボンニュートラルを実現すると話した。生産や流通はともかく、製品自身が消費する電力まで含めるのは「いささかハードルが高すぎるのではないか?」と思う読者もいるだろう。アップルはどんなことに取り組んでいるのか。
新しいiPhone、そして今やアップルのブランドイメージをけん引するほどに成長したApple Watch。それらの新製品を発表した9月のイベントで、2030年までにカーボンニュートラルを実現し「アップル製品が気候変動に与える影響をゼロにする」とティム・クックCEOは話した。
その期限を30年末とするならば、ちょうど7年後、年末向け製品を発表する9月のイベントでは、全製品の開発、生産、流通などはもちろん、製品自身がライフタイムサイクルで消費する電力、廃棄時の製品回収、分解、希少素材の取り出しなどを含め、その全てでカーボンニュートラルを実現していることになる。
生産や流通はともかく、製品自身が消費する電力まで含めるのは「いささかハードルが高すぎるのではないか?」と思う読者もいるだろう。しかし、この定義はアップル自身が自らに課した課題でもある。
イベントでは、カーボンニュートラルに対する取り組みをコメディー仕立てのドラマ演出で紹介した。寸劇には、アップルの発表会ではおなじみのエグゼクティブたちが集合し、現在は慈善活動家として勢力的に動いているオプラ・ウィンフリーまで登場。このテーマに対して消費者に興味を持ってほしいと思う、アップルの強い気持ちが現れている。
その本気度を示す製品も用意している。Apple Watchの新製品、Series 9とUltra 2である。両製品とも再生素材を積極的に取り入れ、ストラップに使う素材を見直すなどの取り組みをすることで、「完全にカーボンニュートラル」なパッケージにすることに成功した。
アップルはどんな取り組みをしているのか?
カーボンニュートラルへの取り組みは、今や大企業にとって真っ先に取り組むべき大きな課題となっている。温室効果ガスを排出する自動車などはもちろんだが、アップルのように生活基盤の一つとなったスマートフォンなど電子デバイスでのシェアが大きなメーカーにとっても、やはり大きな課題である。
では、彼らが取り組んでいるカーボンニュートラルへの挑戦とは、どのようなものなのか? それは企業活動そのものの炭素排出を実質ゼロにすることから始まり、開発、生産、流通、そして運用までの“ネットゼロ”を実現することだ。つまりアップルの製品が大量に販売され、世界中のあらゆる場所で使われたとしても、トータルの炭素排出を実質ゼロにすることである。
消費者はアップル製品を選ぶことで「地球への環境負荷をかけない」という意思表示を行える。いささか宗教じみている……と感じる読者もいるかもしれないが、企業としての責任を果たすだけではなく、その取り組みの成果をアップルのブランドに取り込むには必要なこだわりともいえる。
30年までに彼らが取り組んでいる目標は3つある。
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