アップル「2030年カーボンニュートラル達成」の本気度 7年で何ができるのか?:本田雅一の時事想々(4/4 ページ)
アップルの新製品発表会で、ティム・クックCEOは、2030年までにカーボンニュートラルを実現すると話した。生産や流通はともかく、製品自身が消費する電力まで含めるのは「いささかハードルが高すぎるのではないか?」と思う読者もいるだろう。アップルはどんなことに取り組んでいるのか。
残り7年で何ができるのか?
長大な記事になってしまったが、「製品を使用することで生まれる炭素排出のネットゼロ」を達成するには、それだけ多岐にわたる取り組みが必要ということでもある。
彼らがより電力消費の大きなMacやiPad、出荷台数が桁違いに多いiPhoneなどでもカーボンニュートラルを目指すのであれば、さらに多面的な取り組みとこれまでにない創意工夫が必要になってくるだろう。
また、出荷台数が少なく社会的な影響はスマートフォンなどより低いとはいえ、大型ディスプレイや高性能のMacデスクトップ型Macに関して、取捨選択が求められるだろう。環境負荷が大きすぎると判断されたならば、それまでのやり方を変える必要に迫られる。
サプライチェーンの幹部とも、このテーマについて話し合い、調達するコンポーネントや素材のさらなる炭素排出量削減を継続的に行い、サプライチェーン側で「このようなことができるのでは」とアイデアを出しながら、共同で脱炭素に向けた開発を行うなどの取り組みも行っているという。
とはいえアップル自身、Apple Watch以外のジャンルでもカーボンニュートラルを実現するには、より多くの革新的なアイデアが必要だと認めている。追加的なアイデアや技術的なソリューションは必須だろう。販売手法などでももっと工夫が必要だ。
例えばApple Watchの販売では現在、本体の購入時に必ずストラップも選ばねばならない。すでに多くのストラップを所有しているユーザーもいるならば、本体のみの購入手段も用意すべきだろう。
アップルによるとApple Watch購入者のうち、買い換えユーザーは3分の1にすぎないという。とはいえ、環境面では本体のみの販売も考慮されるべきだ。アップルは不要になったストラップを引き取る、無料のリサイクルプログラムを設けている。
今年は「iPhoneのLightning端子の廃止」という大きな節目もある。全世界でLightning対応機器やケーブルについて、膨大な量の廃棄物、あるいは不良在庫を生み出すに違いない。過去との決別に必要なこととはいえ、アップルにとっては大きな教訓として刻まれることになるだろう。
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