「やる気」「気合い」に頼らなくいい――学び直しの6つの勘違い:やり方次第(2/2 ページ)
社会人の学び直し。「やる気」や「気合い」に頼ると失敗する。ではどうすべきか? 石角友愛氏の著書『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP、2023年)に、編集を加えて転載。
4. 自分の強みに合っていないリスキリングをする
自分の強みに合っていないリスキリングは非効率です。もちろんリスキリングではなく、趣味として何かを学ぶのであれば全く問題ありません。しかし、キャリアアップが目的のリスキリングであれば、小さくても構わないので、早い段階で成功体験を感じられないと継続は難しいものです。「自分に合っているかどうか」が不安なら、あらためて自分に適したリスキリングを探すところからスタートしましょう。
5. ゴールなしにリスキリングを開始する
どのような状態になったら「リスキリングが成功した」といえるのかを定義してから、リスキリングをスタートしましょう。
私は普段、日本企業へのAI開発・導入をしたり、DXの推進をサポートしたりしています。そのときにいつも感じることですが、「AIを導入すること」や「DXを推進すること」自体が目的になってしまっている企業は「どのような状態になりたいのか」がイメージできていないので、適切な計画を立てられません。
企業と個人という差はありますが、リスキリングもこれと同じような構造になっているケースがあると思います。自分がどのようなキャリアを目指しているのか、明確なイメージがないにもかかわらず、「とにかくデータサイエンスを学ぼう」となってしまうのです。
人は「自分にとってなぜそれが必要なのか」が腹に落ちることで、習慣化できるようになり、その努力を継続することが可能になります。ジェームズ・クリアー氏が書いた世界的ベストセラー『複利で伸びる1つの習慣』(パンローリング)では、このことを「アトミックハビッツ」と読んでいます。
これは小さな習慣が最大の効果をもたらすといった意味で「最小習慣」と訳されています。同書では、さまざまな習慣化のポイントを紹介していますが、中でも大事なのが「自分にとってなぜそれが必要なのか」「どのような状態になれば成功なのか」を明文化することです。
6. やる気や気合に頼る
すでにさまざまな研究で言及されていますが、「やる気」は待っていても降ってはきません。やる気というのは、やり始めた後に湧いてくるものなのです。ですから、どれだけ機械的に学びをスタートできるかについて考えましょう。
英語に「Use it or lose it」という言い回しがあります。これは「使わなければなくなる」という意味です。学習する能力は筋トレと一緒。習慣化してこそ、鍛えられる能力なのです。
著者プロフィール:石角友愛(いしずみ・ともえ)
パロアルトインサイトCEO/AIビジネスデザイナー
2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。データサイエンティストのネットワークを構築し、日本企業に対して最新のAI戦略提案からAI開発まで一貫したAI支援を提供。東急ホテルズ&リゾーツ株式会社が擁する3名のDXアドバイザーの一員として中長期DX戦略について助言を行う。
AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。
毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。
著書に『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com
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