チケット最高額は1200万円 ドコモが「バイエルン対マンC」でスポーツ興行に参入した狙い:携帯、配信に次ぐ収益源に(2/3 ページ)
ドコモはJリーグと共に主催者となり、世界最高峰のクラブチームであるマンチェスター・シティFCとFCバイエルン・ミュンヘンという「奇跡の一戦」を開催した。なぜ通信会社ドコモが、スポーツ興行に参入したのか。キーマンに聞いた。
超富裕層の市場 日本は世界4位
ホスピタリティビジネスは、世界ではサッカー、F1、競馬などで当然のように展開されている。日本でも、2019年のラグビーワールドカップで本格導入されたものの、まだまだ完全に浸透したとはいえない状況だ。そんな中、ドコモはなぜホスピタリティビジネスをやろうとしたのか。
「ホスピタリティエリアは欧州のスポーツ興行の場では、上流社会の社交の場となっています。その人たちが素晴らしい空間で楽しんでいる様子は、本当にすてきな雰囲気なのです。日本のプロスポーツでもスポンサー企業に対して年間シートや専用ルームなどを提供しています。ただ、その利用方法は、スポンサー企業の幹部が楽しむ他、取引先企業との商談の場に使うなどに限られています」(鈴木課長)
これまではスポーツ運営側がスポンサー企業から受け取った協賛金によってホスピタリティエリアを運営していた。鈴木課長は「それをスポンサー企業に限らず、一般のファンや本当にサッカーの好きな個人も試合ごとに購入できるようになれば、新たな収益源を生み出せると考えた」のだという。
協賛面はどうか。明治安田Jリーグワールドチャレンジ2023 powered by docomo 、Audi Football Summit powered by docomoの協賛企業にはアサヒビール、アウディ、SBI証券、インフロニア・ホールディングス(前田建設工業などの持ち株会社)、ディップ(人材紹介業)など9社が集まった。
スポンサーになった理由は露出以外にも「社員満足度を上げる」「人材採用に効く」などさまざまだ。どのようにスポンサーを募ったのか聞いてみた。
「(協賛獲得には)従来よりドコモが持つ法人営業部隊の機能を活用しました。具体的にはdポイントの加盟店企業さまや、メーカーさまと向き合う法人営業部隊がおり、その法人営業部隊からお客さまへスポンサーメリットを提案することによってスポンサーを募りました。ただ、スポンサーメリットを提案する上で必要な、ホスピタリティプログラムを含めた協賛パッケージ内容が固まったのが5月だったので、営業からは『企画が遅い』と言われてしまいました」(鈴木課長)
鈴木課長は苦笑いをしていたものの、高額でも魅力的なパッケージを提示すれば、賛同を得られることが分かる。
英・調査会社アルトラタが発表した、3000万米ドル以上の資産を保有する「超富裕層ランキング2022」によると、日本人の超富裕層の数は1万4940人で米国、中国、ドイツに次ぎ4位で、それなりの市場がある。
「ここがメインマーケットになっていくと思っています。会社オーナーやとにかくサッカーが好きという人に購入していただきました。今後はさらに、富裕層がフットボールに対して、どれだけ関心を持っていただけるかだと思っています」(鈴木課長)
ドコモがホスピタリティの企画を、Jリーグ側に提案した当初の反応はポジティブではなかったという。
「ホスピタリティチケットを買った一般客の導線と、各業界から招待するVIPが入るエリアの導線が被ることなどを懸念されましたが、話し合いを続けて、今回のホスピタリティエリアを作り上げました。試合後は、以前から来場していたVIPの方々からも『良かったよ』とコメントをいただけたようなので、トライしたかいがありました」(鈴木課長)
1日当たりのグッズ販売は過去最高を記録
グッズ販売でも「Jリーグの試合における1日のグッズ販売の最高記録を更新した」ほどの大きな売上高を記録した。試合当日の会場周辺には、グッズなどの各ブースに長蛇の列ができていた。ユニフォーム、キーホルダー、Tシャツなど306種類が全て完売したそうだ。
「お客さまから『会場で買えなかった』という声が聞こえたので、当日、買えなかった人に対して『Jリーグオンラインストア』に誘導し、受注生産する態勢を急きょ整えました」(松田氏)
サッカーにおいて日本人はアジリティ(敏しょう性)に優れていると評価される。今回ドコモはグッズ販売でも「アジリティの高さ」を示した。鈴木課長はチケット販売に加え、グッズ販売という収益源の重要性を説く。
「個人的にはスポーツはB2Cの売り上げ比率が高い方が、ポートフォリオとして健全だと思っています。スポーツにおける各クラブや球団は親会社からの資金面での大きなサポートや、スポンサー企業からの協賛金比率が高いところが多いですが、もし景気の波の影響を受けて、それらの資金比率が下がったとしてもビジネスを継続できるのが理想の形だと思います」(鈴木課長)
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