当事者にとどまらない支援を 企画の背景
あいおいニッセイ同和損保では、多様な社員が、仕事もプライベートも大切にしながら総活躍できる会社を実現することを目標に掲げている。これまでも両立社員の支援には注力してきたが、当事者に対する支援施策が中心だったという。
しかし実際には、ともに働く職場メンバーの協力、理解が不可欠だ。両立社員からの「職場の理解」を求める声もあり、育児との両立について職場全体で理解を深める場として今回の企画・開催に至った。
「職場は年齢、性別、立場、いろいろな人で構成されているので、もちろん子育てしていない人も大勢います。その中で時間制約がある働き方について、子育てを経験していない人にも理解してほしいという希望はよく聞きます」(宮岸さん)
併せて「これは子育て社員を優遇してほしいというわけではない」と宮岸さんは続ける。プライベートも大切にする職場づくりには、どんなことがあっても回る社内状況が欠かせない。残業ありきや「あの人がいないと回らない」というような属人的な状態をなくしていきたいと意気込む。
同社では、男性育休の推進も注力しており、25年までに男性の育児休業期間を1カ月以上にするという目標を掲げている。現在の育休取得状況はどのくらいなのだろうか。
男性育休取得率を上げる2つの取り組み
同社の育休取得率は、23年9月末の時点で93.5%と高い数値を誇る。社内の男性社員に行った調査によると「将来子どもができたら育休を取りたいか」という質問に、88.5%が「取りたい」と回答しており、「1カ月以上」取得したいという声が目立ったという。
こうした声も踏まえ、同社では男性育休の取得率を上げるために、管理職を対象に男性育休に対する理解を深める取り組みをしている。(1)新任管理職への個別研修、(2)育児休業計画書の提出の必須化――の2点だ。
(1)新任で管理職になる人には、男性育休に関して個別に研修を行う。これは制度の説明だけでなく、世の中の変化や女性の就業観、男性も家事、育児に参加したい人が増えているという時代の変化も併せて伝えているという。
(2)今年度より子どもが生まれた、もしくは配偶者が妊娠している社員には、1カ月の「育児休業計画書」の提出を必須とした。初めての育休でどのように計画したらいいか分からない人には、赤ちゃんが生まれた後の流れをまとめた「家族ミーティングシート」を提供し、サポートする。また早めに休業計画を立てることで、スムーズな引き継ぎにつなげる狙いもある。
「男性社員から奥さんの妊娠のお知らせを聞いたときに『じゃあ育休取ろうよ』と管理職から提案できる風土を目指せるように研修しています」(宮岸さん)
だが同社には1万人を超える多様な社員がいる。自身は「男性育休が身近ではない」というベテラン層もいると思うが、実際に管理職の男性育休への理解は進んでいるのだろうか。
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