退社間際に「あの件、どうなった?」と聞く上司 企業が把握すべき「4つの危険性」(2/2 ページ)
退社間際になって上司から「あの件、どうなった?」などと聞かれてしまう――という経験をしたことはありますか? 5分10分程度で対応可能ならまだしも、長時間に及ぶ場合、労務管理的に問題があるのでしょうか。
(3)残業時間によっては法律違反になる可能性がある
1日8時間、1週間に40時間の法定労働時間を超えて社員を働かせる場合には、労働基準法第36条の定めにより、労使で36協定(時間外・休日労働に関する協定届)を締結し、所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。届け出があれば、記載した時間の範囲内で法定時間外の残業が可能になります。
協定の締結や届け出がなかったり、締結した時間を超えて残業させたりした場合には、法律違反になる可能性があります。そのため、部下を時間外労働や休日労働させる場合は、あらかじめ36協定の締結内容を確認することが必要です。なお、36協定は時間外及び休日労働を認めるものであって、残業代の免除を認めるものありません。従って協定を締結する場合でも時間外手当、休日手当の支払いは必要です。
(4)社員の仕事に対するモチベーションが低下し、生産性の低下や退職につながる可能性がある
残業する理由には、特定の時期に業務集中するなどの一時的な場合と、年間を通じて過重労働が発生するなどの継続的な場合があります。残業時間にもよりますが、継続性が高い場合、過労などにより社員の仕事の質が悪化したり、仕事に対するモチベーションの低下を招き、退職につながる可能性があります。
部下の業務に対して時間管理ができない上司への対処法
管理職者の中には、A課長のようにその時の思い付きで部下に指示を出すタイプの人がいます。しかし「思い付き残業」で部下を振り回し、消耗させることは避けたいものです。
まずは自身が掌握する部署内の業務内容をよく把握した上で、部下に対して適切な業務配分や時間管理のマネジメントを行う必要があります。
しかし、管理職者に上記の自覚がない場合、人事担当部署での対処が必要になります。一例として次の方策が考えられます。
(1)実態をリサーチする目的で、全社員に対するアンケートもしくは人事関係者などとの個人面談などを実施
仕事の内容や残業の有無、上司の指導状況などについて確認し、問題がある部署の有無を洗い出します。特に小規模企業では社長との面談を行うケースが多いです。
(2)残業の多い部署の管理職者に対してその理由を確認
明らかに業務配分や時間管理などのマネジメントができていない場合、部下の出退勤記録から割り出した残業時間と計算した残業代を可視化、提示。ムダな残業時間がどれだけ人件費の増大につながっているかを自覚させ、改善策を考えてもらいます。
(3)管理職者向けの研修を通じて、部下のマネジメント方法を学んでもらう
新しく管理職になった場合、管理職の役割が理解できていないため、一般社員のときと同じ考えで仕事を進める者がいます。管理職の役割は部下の育成と業務をマネジメントし、部署の業績を上げることです。その自覚を持たせるためにも専門的研修を受講してもらう意義があるでしょう。
木村政美
1963年生まれ。旅行会社、話し方セミナー運営会社、大手生命保険会社の営業職を経て2004年社会保険労務士・行政書士・FP事務所を開業。労務管理に関する企業相談、セミナー講師、執筆を多数行う。2011年より千葉産業保健総合支援センターメンタルヘルス対策促進員、2020年より厚生労働省働き方改革推進支援センター派遣専門家受嘱。
現代ビジネス、ダイヤモンド・オンライン、オトナンサーなどで執筆中。
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