「最近の若者は……」と突き放す上司は淘汰される、これだけの理由:働き方の「今」を知る(1/5 ページ)
上司と部下はいつの世代も分かり合えないのが世の常だ。しかし「若者世代はよく分からない」といって、部下とのコミュニケーションを放置するような上司や先輩は、どんどん淘汰されていく可能性が高い。なぜかというと……。
なぜ、上司と部下は分かり合えないのだろうか。
わが国の会社組織はかつて、トップダウン型の指示系統が一般的で「部下は問答無用で上司の言うことを聞く存在」だと考えられがちであった。
しかし、少子高齢化や働き方改革の進展など、労働環境を取り巻く状況は大きく変わりつつある。それに伴い、上司やリーダーが知っておくべき常識にも、変化が訪れている。
「部下のことが理解できない」と感じるリーダーや管理職の多くは、実はこの変化をうすうす感じていても、具体的にその変化がどのようにして発生し、どんな形で影響を及ぼしているのかが分かっていないケースが多い。本稿では、昨今の部下世代が抱いている思いや労働環境における新常識を解き明かしていこう。
若者はいつの時代も「理解しがたい存在」?
まずは、次の文章をお読みいただきたい。
「最近の若者はダメだ」は昔から言われているが、特に今の若者はひどい。まず、当事者意識が完全に欠如している。さらに、独り立ちをしようとせず、常に何かに依存し、消費し、批判するだけの「お客さま」でい続けようとしている。これはゆゆしき事態であり、日本社会のありかたにかかわる重大な問題である。
最近の若者は、定職に就きたがらない。あるいは、会社に入っても一定のポジションで身を立てようとしない。なぜなら、社会的なかかわりを、全て暫定的・一時的なものと見なしているからだ。
「まさにその通り!」と深く納得した上司世代も少なくないだろう。
ネタばらしをすると、実はこの文章は、日本の精神分析学の第一人者である小此木啓吾氏の著作『モラトリアム人間の時代』から引用したものだ。同書の刊行は1978年。すなわちここで示されている「最近の若者」とは、1960年前後に生まれた世代のことなのである。
当時「最近の若者」であった彼らは、現在60代前半。会社組織でいえば役員になったり、役職定年を過ぎてベテランとして活躍していたりする世代であろう。まさに今「最近の若者は……」と苦言を呈している世代の皆さまも、上の世代からは同じように、理解し難い「最近の若者」として扱われていたということがよく分かる。
いつの時代も、若者とは年長者にとって理解し難いものであり、彼らのことを考えるたびに「このままだとわれわれの会社はどうなってしまうのか」という深い憂慮の念に駆られてしまう存在であったことは間違いない。
テクノロジーの進展や社会自体の変容、自分たちが慣れ親しんできた環境や信念の理想化、コミュニケーションスタイルの変化などといった時代の変化により、年長者は彼ら自身の若い頃と比較して、若者の行動や価値観に違いを感じることは常にあり得ることなのだ。
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