「最近の若者は……」と突き放す上司は淘汰される、これだけの理由:働き方の「今」を知る(3/5 ページ)
上司と部下はいつの世代も分かり合えないのが世の常だ。しかし「若者世代はよく分からない」といって、部下とのコミュニケーションを放置するような上司や先輩は、どんどん淘汰されていく可能性が高い。なぜかというと……。
人口大国というメリットに支えられていた日本経済
部下世代の気持ちを知る上でポイントとなるのが、現在20代の若手社員と、40代後半〜50代の上司世代の間にある社会環境と価値観の変化に関する大きなギャップである。
「俺たちが若手の頃は、●●なんて当たり前だった!」は指摘の理由にならないどころか、そんな理由でしかりつけたら最後、部下からの信頼を失ってしまうことになるだろう。われわれがこれまでに学び、認識してきた「常識」は、時代と共にどんどん変化しているのだから。
例えば、学校の教科書だけを見ても「太陽系第9惑星」だと教えられてきた冥王星は、天体研究の進展によって、同等もしくはそれより大きな外惑星が続々と発見されたことから、2006年から「準惑星」との分類になった。同様に、「イイクニつくろう」と覚えてきた鎌倉幕府の開府年である1192年は、現在の教科書においては「1185年」と記載されている。歴史研究により、この年に源頼朝が朝廷に守護や地頭の設置を認めさせて実質的な支配権を得て、朝廷から頼朝に権力が確実に移行したことから、開府年にふさわしいと判断されたためである。
学校教育でさえこれほどの変化がある世の中。日進月歩のビジネスの世界であればなおさら、旧来の常識は通用しないと考えてよい。では現在、社会の常識はいかほど変わっているのか。それを知るために、ここ数十年の日本の労働環境について振り返っていこう。
戦後、高度経済成長期を経て、わが国が世界第2位の経済大国という地位に長年居続けられた理由の一つは「日本が世界有数の人口大国だった」からに他ならない。当時の日本は国内市場が大きい一方で、高齢者人口の割には若い人の割合が多く、経済成長分野に予算をつぎ込むことができたからだ。
モノは造れば造った分だけ売れていくので、残業や休日出勤、転勤や出向もいとわずに仕事に邁進し、組織貢献できる人が重宝され、評価されて出世していった。そして同じように家庭を顧みず、滅私奉公する人が上の立場につくことで、同じような価値観を持つ管理職集団が出来上がることになる。
それが良い、悪いという話ではなく、当時はその方法が日本経済発展における最適解であったのだ。経済拡大に伴って報酬も右肩上がりとなっていったため、将来には希望があふれ、人々はおおむねハッピーだったといえる。
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