「きっちりやれ」と指示する上司が、若手から嫌われるワケ:働き方の「今」を知る(2/3 ページ)
労働環境が変わる中、社員たちが上司に求める理想や常識も変化してきている。では、昨今の若手社員の就労意識は、上司世代と比してどのように変わったのだろうか。
「ちゃんとして」「きっちりやれ」若手社員に嫌われる上司の特徴
また「指示があいまいなまま作業を進めること」に対しては8割の若手社員が抵抗を感じており、的確な指示と、手順が分からない場合は部下から質問できるようにすることが求められている。
日本企業の慣習として行われがちだった「ちゃんとして」「きっちりやれ」「しっかり仕上げて」といったあいまいな指示をする上司は、嫌われるのだ。
同時期の別会社の調査においても、ほぼ同様の結果が出ている。リクルートマネジメントソリューションズ「新入社員意識調査2022」によると、「上司に期待すること」として「相手の意見や考え方に耳を傾けること」「職場の人間関係に気を配ること」が過去最高の選択率となっている。
価値観の多様化がうたわれる社会において、一方的に伝えるだけではなく、部下の意見もきちんと聞く──といった、個性や違いに受容的で、傾聴型のコミュニケーションを望む傾向を生み出していると推測できよう。
先輩世代は、自分の中の「新入社員」のイメージをリセットする時期
新入社員に対するイメージや接し方は、上の年代であればあるほどにリセットする必要があるだろう。なぜなら、世代間における「仕事」「上司」「会社」に対するイメージは大きく変容しているからだ。
少々余談となるが、かつて日本生産性本部が毎年「今年の新入社員の特徴とタイプ」を発表していた。筆者が新入社員であった1999年当時の特徴とタイプは、「形態安定シャツ型」であった。その解説には「防縮性、耐摩耗性の生地(新人)多く、ソフト仕上げで、丸洗い(厳しい研修・指導)OK。但し型崩れ防止アイロン(注意・指示)必要」と書かれている。「厳しい指導OK」とのコメントは、今となっては隔世の感があるところだ。
なお同本部による「新入社員の特徴とタイプ」発表は2017年で終了してしまったが、現在は産労総合研究所が引き継いで実施しており、2023年度の新入社員タイプは「可能性は∞(無限大) AIチャットボットタイプ」だそうだ。
すなわち「知らないことがあればその場でごく自然に検索を始めるデジタルネイティブ世代である彼らは、さまざまなツールを扱い答えを導き出すことにかけては、すでに高いスキルをもっている」「先輩社員は、彼らの未熟な面や不安をこれまで以上に汲み取りながらコミュニケーションを取ってほしい。AIチャットボットが適切なデータを取得することで進化していくように、彼らは適切なアドバイスを受けることで、想定を超える成果を発揮する可能性に満ちている」とのことで、ここでもまたコミュニケーションの配慮が促されている点は非常に印象深いところである。
さて、これらの調査結果から導き出せる若手世代とのコミュニケーションの要点は「多様な価値観への理解」をベースにした「寛容なコミュニケーション」であり、彼らのちょっとしたプラスの変化や長所に対する「承認の姿勢」といえよう。それによって職場の心理的安全性を高め、彼らの一歩踏み出すアクションを促すことができれば、上司や先輩に対する信頼感は増していくはずだ。
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