優秀な営業マンにあえて「売らせない」 独自の組織体制
SFAの導入にあたり「面倒だと言って、現場の営業パーソンがなかなか入力しない」ことを課題視する企業は多い。オープンハウスの営業パーソンは、多忙の中でも小まめにSFAに入力をしているのだろうか。
石井さんは「オープンハウス独自の組織体制の影響で、誰もがSFAに詳細な情報を登録せざるを得ない」と説明する。
不動産営業は個人競技で、各営業がそれぞれの数字を追いかけているイメージが強い。しかし同社の場合は大きく異なり、マネジャー(管理職)が3人ほどの営業を抱え、チームで売り上げを追う。部下2人の売り上げの合計がマネジャーの成績として評価されるのだ。
「マネジャーは部下全員の顧客情報を同時に、全て詳細に把握しなければいけないので、自然と営業パーソンはSFAに情報を綿密に入力するようになります。SFAの入力がなければ、管理もできませんし、成約も減ってしまいます」
同社のマネジャーは管理業務に集中し、基本的に顧客を持たず、商談にも参加しない。部下の売り上げ目標を達成するために毎日必要なコミュニケーションを取る。
石井さんは毎朝部下全員分の顧客をチェック。それぞれの顧客が今どのようなフェーズにあって、アポが取れているのか、それとも案内済みで次の提案の状況なのかを確認し、提案する物件のアドバイスや商談に向けた準備をしているそうだ。
同社では、マネジャー層とプレイヤーの比率が「1対1.5」だという。
「優秀な営業パーソンに売ってきてもらう方が数字になると考える企業が多いと思います。当社では、あえて優秀な営業パーソンにマネジャーとして管理に専念してもらうことで、そのノウハウを後輩に遺伝させることができています。この体制により、優秀な営業マンがどんどん育って、会社の成長にもつながっているのではないかと考えています。
社長によく『自分ができることを全て、部下3人に伝授し、育成できれば、売り上げは3倍になる』と言われおり、自身のノウハウを全て部下に伝えていくことは、当社の中では当たり前の文化として根付いていますね」
このようにスキルやノウハウを循環させることで、オープンハウスは売り上げ1兆円まで成長してきたのだという。
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