ゼクシィの「同性カップル広告」狙いはどこに? 背景に未曾有のブライダル不況:スピン経済の歩き方(2/7 ページ)
結婚情報誌「ゼクシィ」の広告が話題になっている。JR渋谷駅の近くに、同性カップルや事実婚のカップルを起用したところ、賛否両論の声が……。
絶対的なポジションを築いてきた
「日本人の結婚を応援してきたゼクシィの意義のある取り組みを、そんな風にしか見れないとはなんと心の荒(すさ)んだ人間だ」と軽蔑する人も多いだろう。ただ、ゼクシィのビジネスモデルと取り巻く環境を理解すると、どうしてもそのような見方になってしまうのだ。
これはあらゆる商業メディアに当てはまることでもあるが、ゼクシィは「結婚情報誌」「結婚情報サービス」である以前に、「ブライダルビジネスをしている企業の広告媒体」でもある。しかも、結婚式場を運営する企業や、結婚式のプロデュースをする企業からすれば、ゼクシィに掲載されるか否かで生死が分かれるほどの「最強広告媒体」なのだ。
分かりやすいのは、2018年3月12日の「リクルートホールディングス 強さの源泉と成長戦略」という資料だ。この中で、リクルートの媒体に共通するのは、企業クライアントから広告料や成果課金を受けて収益を得る「リボンモデル」だとしている。また「ゼクシィ」や「じゃらん」が入る「メディア&ソリューション」という事業については、「主に広告課金で顧客の採用・集客を支援」と説明する。
そんなメディア&ソリューション事業について、リクルートは圧倒的な競争優位性を保持していると自画自賛。その強さの秘密として、「膨大な企業クライアント数」と「高い送客率」「圧倒的なユーザー数」を挙げている。
送客率とは、広告媒体を経由して、クライアント企業へ予約・応募というアクションに結びついたものだ。つまり、リクルートの情報誌は広告効果がずば抜けて高いですよ、と言っているわけだが、実はその中でもずば抜けて高いのがゼクシィなのだ。
メディア&ソリューション事業の中で「住宅」や「求人」の送客率は20%台だが、「結婚」はなんと44.4%。つまり、ゼクシィは「SUUMO」や「タウンワーク」「リクナビ」などと比べて、2倍近くの送客率を誇っているということなのだ。
こうなると当然、広告料金も高く設定できる。かくして、ゼクシィは「ブライダルビジネスをするならここに広告を出さないと始まらない」という絶対的なポジションを築いてきたわけだ。しかし、そんなゼクシィの成長に陰りが見えてきている。広告クライアントであるブライダル業界が急速に衰退しているからだ。
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