ゼクシィの「同性カップル広告」狙いはどこに? 背景に未曾有のブライダル不況:スピン経済の歩き方(3/7 ページ)
結婚情報誌「ゼクシィ」の広告が話題になっている。JR渋谷駅の近くに、同性カップルや事実婚のカップルを起用したところ、賛否両論の声が……。
「静かな経営危機」が続いていた
分かりやすいのは、ブライダル大手のワタベウェディングの債務超過だ。現在、債権者の金融機関6社が90億円の債権放棄をして、医薬品メーカー「興和」の傘下になって経営再建をしている。
また、つい最近も「グラヴィス」という愛知県内で3つの結婚式場を運営していた会社や、広島の結婚式場運営会社が倒産した。急に予定されていた結婚式が行えなくなったうえに、返金もないという被害者も出て、大きな騒ぎになった。
では、なぜこんなにもブライダル業界は壊滅的になっているのか。よく言われるのは「コロナが悪い」という指摘だが、実はそれはあくまで背中を押しただけに過ぎない。ワタベウェディングの元会長、渡部隆夫氏の言葉がすべてを語っている。
「私が社長をしていた頃は、売上高が550億円ありました。長男の渡部秀敏に代わってから100億円下がり、その後はほぼ横ばいの状態です。合理化と称して人員削減などで経費を削って、わずかな利益を出すだけ。経費を削れば、次の戦略構築に支障を来すのです。完全に悪循環に入っていた。コロナがやって来なくても、いつか潰れると思っていました」(日経ビジネス 21年3月31日)
渡部会長が長男に事業承継した08年から、ずっと「静かな経営危機」だったというわけだ。ただ、これは長男の経営方針が特段、悪かったわけでもない。会長が会社を急成長させた2000年代前半からブライダル市場が激変していたのだ。
もうお分かりだろう。ご存じのように、日本は急速に少子高齢化が進んでいる。ということは当たり前だが、結婚をする人の絶対数も急速に減っているということだ。
厚生労働省の「人口動態統計」によれば、12年の婚姻件数は66万8870組だったが、8年後の20年は52万5507組だ。ちなみに、この20年データは19年4月から20年3月までのものなので、コロナ禍の影響は受けていない。
8年で客が22%も減っている。これは戦略だ効率化だということでどうにかなるレベルの話ではない。そして、そんな「大逆風」が吹き荒れる中で、ダブルパンチとなっているのが、「結婚式場での挙式をしない」というカップルが増えていることだ。
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