豊田章男会長退任の舞台裏 自工会はどうやって生まれ変わったのか:池田直渡「週刊モータージャーナル」(7/9 ページ)
日本自動車工業会(JAMA)は定例記者会見を開催し、年明けからの役員交代を発表した。会長職は、これまでの豊田章男トヨタ自動車会長から、片山正則いすゞ自動車会長へと交代する。そこからJAMAの生まれ変わりストーリーをたどってみよう。
JAMAのピンチをまとめた片山氏の手腕
片山氏の話は続く。そういう反省点を痛感しながらも、今は何としても豊田会長に残りの任期を務めてもらうほかない。それをただお願いしても、まず聞き届けてもらえないだろうと思う。だから、これまでおんぶに抱っこだったことを深く反省し、以後は、メディアの前に会長一人を立たせない。それぞれの副会長が専任担当領域を決め、それぞれの領域は責任持って自分の力で説明していく。そうした本当の意味で覚悟を持って一緒に改革を成し遂げていく決意を、役員ひとりひとりが会長にぶつけてみようと思う。そして、任期満了までには自分たちが引き継げる体制を必ず用意する。もはやそれを条件に豊田会長を説得するより道はない。血を吐くように話す片山副会長の暗い表情は、脳裏に焼きついている。
そうして全員の必死の説得で、豊田会長は残り任期に限って引き受けた。筆者から見るとあのJAMAのピンチをまとめた手腕を持ってして、今回の片山副会長の会長就任は当然と思うところだが、片山氏には片山氏の思いがある。
JAMAは豊田会長の指揮のもと、550万人の雇用を守ることを宣言し、さらにモビリティの仲間を加えて850万人の力を集結し、それをさらに1000万人に増やしていくという目標を持っている。片山副会長は、かつていすゞのリストラを指揮した経験がある。雇用を守れなかった自分にはJAMAを率いる資格がない。そう言って何度も固辞したと伝え聞いている。
しかしながら、世界は100年に一度の大改革の真っ最中であり、マルチパスウェイのカーボンニュートラルも、自動運転やDX、資源のリデュースやリサイクルも一斉に進めていかなくてはならない。自動車産業としてそれに向き合った時、商用車の果たす役割はとても大きい。
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