マック、KFCより人気 「日曜は働かない」米最強ファストフード店のビジネスとは?(3/3 ページ)
米国には、日本で人気のKFCやマックが太刀打ちできないほど人気の最強ファストフード店があるという。日曜日は定休。それでも顧客満足度は全米1位。いったい、どんな企業なのか――。
長蛇のドライブスルー解消へ次の一手とは?
一方で、KFCもマックもチックフィレに負けていないところがあります。それは、ドライブスルーの平均待ち時間です。ファストフードチェーン大手10社を対象にした調査によると、チックフィレのドライブスルーの平均待ち時間は509秒(8分29秒)とあり10社中、最も長い待ち時間となっています。
KFCは302秒(5分2秒)で最も短く首位。競合に比べ3分以上もチックフィレで待たされるのは、圧倒的な人気だからです。ドライブスルーに並んでいる平均台数はチックフィレが4.74台でダントツのトップ。KFCはチックフィレより3台弱少ない1.98台しかありません。
そこで、待たせないようにするためかチックフィレは11月13日、同社としては初となるドローン宅配を開始したことを発表しました。とはいっても期間限定となるフライドチキンの空輸はドローン開発のスタートアップ、DroneUp(ドローンアップ)と提携したテスト。場所はフロリダ州タンパ郊外のブランドン地区にある1店舗のみ。
ドローンデリバリーの対象はチックフィレ・ブランドン店から1.2マイル(2キロメートル弱)圏内となっています。手数料は無料ですが、利用時間は月曜〜金曜の午前10時〜午後6時。周囲が住宅街であることから、悪天候での空輸は行わないといいます。
Walmart(ウォルマート)とも提携しドローン宅配を行っているDroneUpのドローンはフライトオペレーターが必要で、機体にあるカメラを介してモニタリングしながら操縦する仕様です。そのため移動式の管制塔を店舗敷地内のハブ(空港)に設置しています。
公開されたドローン宅配の動画を見るとチックフィレから注文品を渡されたDroneUpのスタッフが注文品を専用のパッケージに梱包(こんぽう)して、ドローンに取り付けています。機体下にパッケージを装着した後、垂直にテイクオフ。連邦航空局が承認したDroneUpのオペレーターがドローンを操縦し空輸です。
サービス利用者宅では家のドライブウェイ(ガレージ前の道路)もしくはバックヤード(裏庭)の上空でホバリングしながら、ケーブルを下ろして注文品を届けているのです。
手数料を無料にしても人件費などで割高となりサステナブルなデリバリーではありません。したがってドローンによる宅配は実験でありながら、マーケティングとしての機能も果たしています。
圧倒的な売り上げの差にドローンまで使われると、ドナルド・マクドナルドさえカーネルの後を追って道頓堀に飛び込みたくなるかもしれません。それほどまでに、米国におけるチックフィレ人気は盤石なのです。
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