横浜にオープン「レジなし店舗」の勝算は? 米では相次ぎ閉鎖も(1/3 ページ)
米アマゾンの「アマゾンゴー」が近年、相次いで閉鎖している。レジなしで時短や省人化などの恩恵が期待されたが、思いがけない落とし穴が潜んでいると筆者は指摘する。
10月27日、JR横浜駅近くに開業したイオンフードスタイル横浜西口店内に、レジのないウォークスルー型店舗「キャッチ&ゴー」(CATCH&GO)がオープンしました。天井に取り付けたカメラや商品棚の重量センサーがお客と商品をフォローし、お客は店を出るだけで決済できるシステムです。
レジなし店舗は、国内ではオフィスビルのコンビニなど一部で導入例がありますが、不特定多数の人が利用する路面スーパーに併設される店舗としては国内初といいます。
店舗を運営するダイエーは、通勤時やランチタイムなどの需要を取り込むことで1日最大1000人の来店を見込んでおり、新しい買い物体験を提供することで今後、国内最大規模の利用客数を目指すとしています。
こうしたレジなし店舗は米アマゾンの「アマゾンゴー」(Amazon Go)が有名ですが、近年、閉鎖が相次いでいます。レジなしで時短や省人化などの恩恵が期待されましたが、そこには思いがけない落とし穴があったのです。
著者プロフィール:後藤文俊(ごとう・ふみとし)
流通コンサルタント。
35年近い在米生活に基づき、米国の流通業に視察に訪れる経営者や企業を支援している。
公式Webサイト「激しくウォルマートなアメリカ小売業ブログ」では日々、米国小売業の最新情報を発信している。
横浜に国内初の「レジなし」路面店
キャッチ&ゴーがオープンしたのは、イオンモールが運営する新商業施設「スィーユー ヨコハマ」(CeeU Yokohama)の1階。約15坪の売り場に飲料や弁当など約400アイテムを取りそろえ、スーパーの従業員が品出しします。
利用の仕方は専用アプリにクレジットカードなど決済情報を登録。アプリで開いたQRコードを入り口ゲートにかざして入店し、商品を持ったままゲートを出ると支払いが完了します。最大同時入店は12人まで。最短10秒で買い物ができ、買い物時間の短縮や省人化につながると強調されています。
ダイエーのキャッチ&ゴーは、NTTデータが提供する「Catch&Goサービス」を活用。店舗に設置したカメラと商品棚の重量センサーで手に取った商品を認識する仕組みで、来店客はレジを通らず、退店するだけで決済が完了します。
同様の技術に、ネット通販最大手アマゾンが開発した自動決済システム「ジャスト・ウォークアウト」(Just Walk Out)があります。こちらも天井から無数につられているカメラやセンサーで買い物客の動きをトラッキングし、人工知能(AI)のディープラーニングを駆使して正確に決済するシステムです。
ジャスト・ウォークアウトはレジなしコンビニの「アマゾンゴー」(Amazon Go)やアマゾンが開発した食品スーパー「アマゾン・フレッシュ」(Amazon Fresh)、アマゾン傘下のオーガニック・スーパー「ホールフーズ・マーケット」の一部に導入されています。
アマゾンはすでに同システムを他の小売店にも外販しており、空港ターミナルやアリーナなどのスポーツ施設、テーマパーク、キャンパス内の売店など57店舗(うち米国外に3店舗)を展開しています。
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