苦戦していた「サントリー烏龍茶」に反転攻勢の兆し 「そういえば最近飲んでない」問題にどう向き合ったのか(3/4 ページ)
1981年発売のロングセラー商品「サントリー烏龍茶」は、近年ダウントレンドが続いてきた。しかし、戦略を見直すことで反転攻勢の兆しが見えてきた。
競争が激化
サントリー烏龍茶の販売量のピークは2000年初頭で、その後はダウントレンドとなっていく。
さまざまな茶系飲料が増えたことがその背景にある。例えば、女性向けのブレンド茶や、のどが渇いた時にゴクゴク飲む麦茶が次々と登場した。そして、特保(特定保健用食品)が登場したことで、健康訴求の商品も増えた。相対的に、サントリー烏龍茶の存在が希薄化していくことになる。「なんとなく健康によさそうだ」と飲まれていたサントリー烏龍茶にとっては不利な状況となった。
同社はこうした流れを変えるべく、さまざまな試行錯誤をしてきた。例えば、「食中茶」としての利用シーンに着目し、「焼き肉と一緒に食べる」といった点を強調した。
また、ポリフェノールを増量したこともあった。しかし、烏龍茶にポリフェノールが多く含まれていることをアピールできても、一般食品なのでどんな効果があるのかまでは広告規制の関係で伝えられない。
こうした施策は無駄ではなかった。試行錯誤を通して「このお茶は何をしてくれるのか」「何を目的に飲むのか」という点がぼやけていたことに気付いたという。
サントリー烏龍茶を消費者はどう認識していたのか。同社が調査したところ、「過去に飲んだことはあるが、最近飲んだのがいつか思い出せない」といった回答が多かったという。日常的に選ぶお茶の選択肢から外れていた。
一方、ずっと烏龍茶を飲んでいる人にその理由を聞くと「健康」を挙げた。そこで、健康面に改めてフォーカスすることに。烏龍茶の成分であるポリフェノールに注目して調べたところ、「おなかの脂肪を減らす」と訴求できることが分かった。
22年7月、同社は「サントリー烏龍茶OTPP」を発売。ウーロン茶重合ポリフェノールの働きでおなかの脂肪を減らす機能性表示食品として新たに打ち出した。ちなみに、商品の中身は変えていない。
こうしたリニューアルの効果もあり、22年の出荷量は前年比1%増、23年の1〜10月は前年同期比5%増となった(後述する「黒烏龍茶」は除く)。現段階では、反転攻勢の兆しが見えてきたという認識だ。三村氏は「過去に飲んだことを思い出して再び手に取ってくれる人もいました。また、昔のことを知らない若い人にも『烏龍茶っておなかの脂肪を減らすんだ』と気づいてもらえました。明確な価値訴求ができたことで、お客さまのすそ野が広がったのではないでしょうか」と説明する。
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