東急歌舞伎町タワー、開業9カ月でどんなことが見えてきた?:2023年、話題になった「あれ」どうなった?(2/4 ページ)
4月に東京・新宿に開業した「東急歌舞伎町タワー」は少し変わった複合施設だ。エンタメとホテルに特化しており、オフィスや高級ブランドは入っていない。ちょっと変わった業態の9カ月の軌跡について、運営するTSTエンタテイメントの木村社長に取材した。
昼と夜で異なる来館属性 誰がどういった目的で?
歌舞伎町には「夜の街」というイメージがすっかり定着している。東急歌舞伎町タワーは、そこに「歌舞伎町は昼の街でもある」という新しい風を吹かせ始めている。東急歌舞伎町タワーにはオフィスや商業施設が入っているわけではないので、目的を持った来館が多く、昼から人の出入りがある。
「郷ひろみさんのライブを開催した際には、今まで歌舞伎町とは縁がなかったであろう年配の方も見られました。朝帯で言うと、1階のスターバックスコーヒーはインバウンドのお客さんで溢(あふ)れかえっていますね。彼らは昼から横丁で飲んだり、ゲームセンターで遊んだりと、施設内を回遊して楽しまれています。夜は国内外問わず、横丁やゲームセンターが賑(にぎ)わっています。深夜帯にかけてクラブにも人が増えていきます」
東急歌舞伎町タワーの集客に一役買っている横丁は、インバウンド客だけでなく国内客も楽しめる。特に、横丁の良さを再現している要素として「席の近さ」と「ライブ」が挙げられる。
木村社長は「1300席あるとは思えないほどに隣のテーブルとの距離が近く、自然と会話が生まれるような設計にした」と話す。下町で地元の人が内輪で楽しむような空気感を、一般客も楽しめるわけだ。他のテーブルの人との交流があることで短時間でも満足度は高まる。その結果、滞在時間も長くなりすぎず、一定の回転率も期待できる。
ライブは、さながら横丁の「流し(各テーブルを回って客のリクエスト曲を即興で歌うパフォーマー)」のようで、来館者の支持も高い。
横丁のコンセプトでもある「日本の祭り」にちなんで日本各地の祭りの団体を呼んだり、フリーエントリーのカラオケ大会を開催したり、プロダクションの新人グループがパフォーマンスをしたりと、ここでも「好きを極める」要素を散りばめながら、実験的にさまざまなイベントを実施している。ライブから会話のきっかけが生まれ、隣のテーブルと仲良くなるなんて展開もありそうだ。
コロナの5類化移行とほぼ同時期の開業というタイミングに加え、人々の旅行意欲と消費意欲も相まって東急歌舞伎町タワーは大いに盛り上がっている。
木村社長は「日本の国際競争力を高めるために、東急歌舞伎町タワーを観光拠点施設として成長させたいです。街全体で回遊性や賑わいを作り出すために、観光インフラを整備していきます」と意気込む。宣言通り、街の人と連携して、歌舞伎町シネシティ広場でイベントを展開したり、羽田・成田空港直結のリムジンバスを運行したりしている。
実際、東急歌舞伎町タワーの誕生で歌舞伎町に足を運ぶ人が増えたのは事実だろう。しかし、本当に街に広がっているのか、地域の客を奪っているのではないか。もちろん、そういった懸念や意見はあったという。
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