自ら“窓際社員”になる若者──「静かな退職」が増えるワケ:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/3 ページ)
最近の若い人たちは、人生設計がしっかりしている。しかし、仕事のプライオリティは確実に下がっている──。そんな悩みを、リーダー職に就く方々から聞くことがよくあります。米国では「必要以上に一生懸命働くのをやめよう」という「静かな退職」が話題になりました。なぜ、このような現象が起きるのか、そしてマネジャー層はどのように対応すべきなのか。健康経営学者の河合薫氏が解説します。
上司や先輩として、明日からできること
その上で、仕事へのモチベーションを高める「元気になる力」を提供すればいい。具体的には「能力発揮の機会=自分自身を試す機会がある」「意見がいえる=敬意を払われている」「サポートがある=その仕事をやり遂げられる、要求される仕事のプレッシャーに耐えられる」といった経験を与えればいいのです。
それは同時に「私が全ての責任をとってやる」と責任の所在を明確にし、「おお、頑張っているな!」と頑張っている部下にねぎらいの言葉をかけ、「キミなら大丈夫だ!」と背中を押せる上司を目指すことでもあります。
私はかれこれ20年以上、働くことについて研究し、働く人たちの声に耳を傾け、全国津々浦々1000社以上見てきましたが、「声をかける」努力を上司が忘れなければ、部下は育ちます。
「自分をちゃんと見ていてくれるんだ」と思えてこそ人は頑張るし、「自分のことを信頼してくれているんだ」と思えてこそ人は期待に応えようと努力します。いつだって部下のモチベーションの切符は上司の手元にあり、部下は「私のことをちゃんと見てくれている」と感じることで、「私、ここにいていいんだ」と居場所を得ることができ、「よし、もうひとふんばりしよう」と一歩踏み出します。
自分の半径3メートル世界の「ねぇ、ちょっとちょっと」と声をかけられる部下たちに、「あなたのことちゃんと見ているよ」というメッセージを送り続けてください。
そういった小さな「対話」の積み重ねが、「仕事」のボールの質を高めます。それを人は「モチベーション」と呼んでいるだけなのです。
河合薫氏のプロフィール:
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)、『コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)『THE HOPE 50歳はどこへ消えた? 半径3メートルの幸福論』(プレジデント社)、『40歳で何者にもなれなかったぼくらはどう生きるか - 中年以降のキャリア論 -』(ワニブックスPLUS新書)がある。
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