自ら“窓際社員”になる若者──「静かな退職」が増えるワケ:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/3 ページ)
最近の若い人たちは、人生設計がしっかりしている。しかし、仕事のプライオリティは確実に下がっている──。そんな悩みを、リーダー職に就く方々から聞くことがよくあります。米国では「必要以上に一生懸命働くのをやめよう」という「静かな退職」が話題になりました。なぜ、このような現象が起きるのか、そしてマネジャー層はどのように対応すべきなのか。健康経営学者の河合薫氏が解説します。
働き方のパラダイムシフト
「ハッスルカルチャー(仕事を全力で頑張る文化)はもう古いからやめようぜ! ちゃんと人間らしい働き方をしようぜ! たかが仕事でうつになるとか、もうやめようぜ!」という働き方のパラダイムシフトを象徴する言葉として、Quiet Quittingという言葉が生まれ、たくさんの人たちが「自分の生き方で良かったんだ」と安堵した。
それは「私たちは何のために働くのか?」「キャリアとは何か?」という問いでもあります。
つまり、人生設計をちゃんと考えて堅実な人生を送ろうとすることと、「モチベーションが低い」ことは、必ずしもイコールではありません。
本コラムでも何度も書いている通り、人は「仕事」「家庭」「健康」の3つの幸せのボールを持っていて、いずれのボールも決して落とすことなくジャグリングのように回し続ける働き方をしないと幸せになれません。あえて断言しますが、私たちは幸せになるために働いているのですから、昭和時代から引き継がれた「仕事」のボールだけを高く回す働き方は、もういい加減やめた方がいいと思うのです。
仕事を優先するあまり健康を壊したら元も子もないですし、どんなにいい仕事をしても「よかったね」と分かち合える家族や大切な人のいない人生ほど虚しいものはありません。
いつの時代も「ウチ側」のおかしさを教えてくれるのは、「若者」であり、「よそ者」であり、「バカ者」たちです。
冒頭の女性リーダーたちにとっての悩みの種である「今の若い人」には、「ウチ側」のちっとも幸せにならない働き方の構造が見えていました。彼らは「家庭や健康のボールを落とすような働き方っておかしくね?」と気が付いたからこそ、「仕事だけが人生じゃない」働き方、生き方を実践しているのです。
なので、40代以上の人たちは、若い世代の堅実な働き方を批判するのではなく、うらやむでもなく、ただただ「自分の働き方を考える」きっかけにした方がいいように思います。
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