管理職は「感情労働」 反発する部下やプレッシャーをかける上司と、どう戦う?:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/3 ページ)
業務量の増加や世代間ギャップなど、管理職の悩みは尽きない。生き残りに必死でプレッシャーをかけてくる上司や経営層と、労働環境に不満をため込む部下に挟まれ、現場で孤軍奮闘する。そんな現実の中、管理職はどのように自分の仕事をとらえ、働くべきなのか──?
このところ管理職に関する取材やお悩み相談が、めったやたらに増えています。
管理職問題は10年以上前からありましたし、働き方改革が進められていた際には「(部下の)身代わり残業」を余儀なくされ、コロナ禍でリモート勤務や会議が増えた際には、「俺たちの時代は終わった」と嘆く管理職たちの声も聞こえてきました。
そんな中、最近増えているのは、業務量の増加と世代間ギャップによる悩みです。
「ジョブ型になり業務の振り分けに苦労するようになった」
「業務分担で偏りが出てしまい、調整に追われている」
「社会性のない若手のおかげで、日々謝罪の連続」
「いつになったら全員そろうのか。女性の多い職場なので、時短と育休の社員の穴埋めに苦労していたのに、男性社員も育休を取るようになり、常に欠員がいる状態」
「部下の評価に気を遣う。下手すりゃパワハラと訴えられる」
「女性部下が相談にのって欲しいというので、時折ランチを一緒していた。ところが突然辞めることになり、上長に理由を問われ、私からセクハラを受けていたと言ったらしい」
──といった具合です。
コロナ禍を経て、生き残りに必死な「上」(上司・経営層)から管理職へのプレッシャーは最大級に高まっています。さらに、低賃金に不満を持つ「下」(部下)からは「それ、意味あるんですか?」と突かれ、身も心も果てしないストレスにさらされる管理職が量産され続けているのです。
経営層も把握できていない「管理職とは何なのか」
会社側にも責任があります。“にも”どころか、会社側の無責任さが、管理職を追い詰めていることに「上」は全く気がついてない。
私はこれまで企業の経営者たちに「管理職とは何なのか?」と問いかけてきました。
管理職とはプレーヤーとは明らかに別の、人をマネジメントしつつ経営的なところに関わっていく仕事です。「管理職は何のためにあるのか」を明確に意味づけするメッセージを出しつつ、ヒューマンスキルの向上も含めた十分なトレーニングが必要です。しかし、多くの企業ではそれをしません。
管理職としてチームを任されても、新しい人を採用する人事権、報酬などを決める裁量権も、その決定権もない。
加えて、ライフスタイルや働き方の価値観が変わってきた今、管理職は究極の「感情労働(Emotional labor)」なのに、そのことすら分かっていないのです。
管理職は感情労働──なぜ?
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