「あの頃、必死で働いたから今がある」「今の若者はヌルい」と考える上司へ:働き方の「今」を知る(2/4 ページ)
働き方改革が進む一方で「とはいえ、ハードワークで成長してきた」「今の若者はヌルい」と考えたことがある人が多いのではないだろうか。変わりゆく働き方の中で、上司や経営者はこのギャップをどのように捉えてマネジメントすべきなのか。
「セルフブラックであれ」と主張する成功者たち
実際、米Appleのスティーブ・ジョブズ氏は異様なまでに偏執的で、従業員を極限まで追いこんで製品を開発させたと言われるが、結果として同社のブランド価値は、ジョブズ氏がこの世を去った後も高まり続け、現在11年連続で世界首位の地位にある。
米Amazonのジェフ・べゾス氏も、従業員に対して「想像を絶する重圧の中で仕事を強いる」「精神的および身体的疾患を招きかねない」とのことで、ブラック企業との批判もあったが、現在は世界の小売業ランキングで常にトップクラスに位置しており、ビジネスSNS「リンクトイン」が調査する「今働きたい企業ランキング」でも1位である。
実業家のイーロン・マスク氏もまた、南カリフォルニア大学マーシャル経営大学院の卒業スピーチにおいて「人生を成功に導くための5つの原則」として、「超多忙であれ」「週100時間働け」「リスクを負え」と、げきを飛ばしており、この「週100時間働け」というフレーズはスタートアップ起業家の間でよく引用されてもいる。
同じセリフを日本企業の経営者が言えば、あらゆる方向から批判が殺到しそうだが、いずれにせよそれくらいの強い思い入れがなければイノベーションは生まれ得ないということなのかもしれない。
少々話がそれてしまったが、実際に功成り名遂げた経営者やインフルエンサーが「セルフブラックであれ」と主張すると、いかにも確からしく聞こえてしまう。
また、世の管理職層やリーダー層の皆さまの中にも、部下や後輩にはまずはハードワークを経験して成長してもらいたいと思いつつ、一方で現在はなかなかそういったことを言いづらいご時世でもあるため、共感はしつつも、もどかしい思いを抱いている方も多いことだろう。
しかしここで注意が必要なのは、「セルフブラック」といういかにも使い勝手の良さそうな語感のせいで「表面的な理解で他人に過重労働を無理強いしてしまうリスク」が大いにあることと、それによって「過去表舞台から消えていったブラック企業の二の舞になってしまう」可能性が出てしまうことだ。どういうことなのか、詳しく説明していこう。
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