なぜ外資マーケターが優遇される? 3つの要因
異なるマーケターの役割
まず1つ目に、日本と海外ではマーケティングの役割が全く違うことがある。
マーケティングには4P(Promotion, Price, Place, Product)という考え方がある。ただ、多くの日系企業においてマーケティングとは、その1要素であるPromotionを指すことが多い。
Webマーケティング、テレビCMなどの広告費を投じたPromotionを実行する人をマーケターを呼ぶこともあれば、PRに特化した人もマーケター、近年で言えばB2B企業において”セミナーマーケター”と呼ばれる人たちも登場した。
こうした中で、日本においてはマーケティング機能の細分化が起きている。その結果、最近のトレンドとしてはマーケティング人材の副業化が加速した。企業に属さず、得意とする1機能に限定した専門スキルで多数の会社に業務委託契約を結び、サポートするという形だ。
一方、外資系企業ではマーケティングは4Pの全てをつかさどる職種であり、一種経営者のような側面を持つ。
事実、私が新卒で入社した外資系メーカー・ロレアルでは「Product marketing,Brand Marketing」という言葉があった。製品やブランド活動に関わる全てに責任を持つということだ。
テレビCMなどの広告はもちろん、その生産や在庫管理、P&Lコントロール、時には営業と一緒に客先に足を運んで商談もする。つまり、その製品やブランドの売り上げを上げるために最もインパクトのあるレバーを全て持ち、何でもするのだ。
事例を1つ挙げてみよう。私は新卒入社後シャンプー部門に配属され、新発売されるシャンプーの責任者に任命された。
しかし、私の仕事の多くは営業チームと一緒に多くの販売店を回り、自分の製品を売り込みにいくことや、読めない販売予測をさまざまなデータを用いながら解析していくことがほとんどだった。一般的にマーケターがしていそうな、代理店と広告戦略を練るといった仕事は、体感10%程度の時間しか割いていなかった。
もちろん、このような幅の広い役割を1年目から与えられるため、その多くは挫折し、実際に芽が出るのは数%の狭き門ではある。また、ある意味「なんでも屋」の側面を持つため、特定の領域における専門性の高いスキルは身に付かないことが多く、文字通りハイリスクハイリターンなキャリアであるのが実情だ。
ただし、この険しき門を潜り抜けた先には広がるキャリアがあり、経営者になる人材も多い。
総括すると、日系企業のマーケターは比較的プロフェッショナル(特定領域における専門性が高い)型であるのに対し、外資系マーケターはジェネラリスト型であり、実はその役割やキャリアビジョンは根底から大きく違っているのだ。
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