なぜ「ちゃん系ラーメン」支持される? 背景に高齢化 こってり、がっつりだけではない新潮流:長浜淳之介のトレンドアンテナ(2/5 ページ)
「ちゃん系ラーメン」と呼ばれるラーメン店が都内を中心に流行している。その背景にあるのは高齢化だと筆者は指摘する。ラーメンの潮流から最新の動向を読み解く。
ラーメンのトレンドから考える
ちなみに、神田「ちえちゃんラーメン」(東京都千代田区)で配布していた「ちゃんのれん組合2024年カレンダー」によると、ちゃん系ラーメンの定義は「スープは縁までなみなみ」「チャーシュー切り立て」「ラーメンライス最高峰」「もり中華スライス玉子」「麺は中太平打ち高加水麺」だという。
ラーメンのトレンドから、ちゃん系の位置付けを考えてみよう。
ラーメンには大きく、伝統的な中華そばの流れを継承する「清湯系」と、九州から広まった「白湯系」の2種類が存在すると言われる。東京では、戦後間もなく荻窪の「丸長」が、豚骨スープに日本そばの技法である鰹節や鯖節でうまみを加えるアイデアを実践。従来は鶏ガラでスープを取っていた中華そばだが、丸長は動物系と魚介系の両方でスープを取る、革新的なラーメンを生み出した。
一方、1987年に世田谷区の環状七号線沿いにオープンした「なんでんかんでん」は、交通渋滞を起こすほどの大ヒットとなり、本格的な博多豚骨ラーメンを東京に広めた。白湯系の豚骨を中心としたラーメンブームが起こり、93年にオープンした「新横浜ラーメン博物館」(横浜市)の発信力もあって、90年代から2000年代にかけて、さまざまなご当地・ご当人ラーメンが、全国的に発信されるようになった。
トレンドのラーメンの多くが、豚骨、豚骨しょうゆ、鶏白湯などの白湯系であり、流行り廃りを繰り返してきた。一方、町中華から発展した「日高屋」「幸楽苑」「餃子の王将」「大阪王将」などのチェーンでは、昔ながらの清湯系のラーメンを提供して、根強いファンを獲得。また、喜多方、白河などのご当地・清湯系ラーメンも存在感を示した。背脂を入れて、白湯系に負けないこってり感を演出するラーメンも多数登場した。
10年代以降になると、ラーメンブームも落ち着きを見せ、つけ麺や油そば、まぜそばにシフトした。そうした中で、家系、二郎系、担々麺の人気が高まり、東京の中規模以上の繁華街では必ずと言って良いほど見掛ける業態となった。
清湯系では、日本社会の高齢化に対応し、より透き通ったスープで、あっさりしていても旨味がしっかりしたラーメンが「淡麗系」と呼ばれて人気を博するようになった。代表的な店として、10年にオープンした神奈川県湯河原町の「らぁ麺 飯田商店」がある(カップ麺にもなっている)。麻布台ヒルズにある唯一のラーメン店で1杯2000円の「麺尊RAGE」も淡麗系だ。
チェーンでは、08年にオープンした「田中そば店」(東京都足立区)が、喜多方ラーメンをイメージした「気軽に食べられる田舎のラーメン」というコンセプトの淡麗系ラーメンで人気になり、首都圏、中京圏、仙台に約20店を展開している。
ちゃん系も、喜多方ラーメンを彷彿(ほうふつ)させ、昭和の雰囲気がするシンプルな淡麗系ラーメンだ。煮干しラーメンや担々麺のようなニッチな分野、若い人に顧客層が偏りがちなこってりした豚骨や家系、がっつりな二郎系よりも、発展性があると判断して参入する店が急増していると見られる。高齢化に伴いラーメンのトレンドは、新奇性あるこってり・がっつりの白湯系から、クラシックな中にも斬新さを感じる淡麗系へと緩やかに移行しているのだ。
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