「株主優待」人気に陰り 新NISAの人気銘柄はどう変化?:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/2 ページ)
大手ネット証券会社が公表するNISA国内株式ランキングで上位に挙がる企業に変化が生じている。従来ランキングの上位に位置していた日本マクドナルドホールディングスや、吉野家ホールディングスといった、食事券などの株主優待を中心とした「優待銘柄」が上位に上がらなくなってきているのだ。
大手ネット証券会社が公表するNISA国内株式ランキングで上位に挙がる企業に変化が生じている。従来ランキングの上位に位置していた日本マクドナルドホールディングスや、吉野家ホールディングスといった、食事券などの株主優待を中心とした「優待銘柄」が上位に上がらなくなってきているのだ。
最新のSBI証券NISA買付金額ランキング(国内株式)によれば、ランキングは1位のトヨタ自動車から順に日本たばこ産業(JT)、武田薬品工業、三菱UFJフィナンシャル・グループと続く。これらの企業はいずれも株主優待制度がないか、廃止している銘柄だ。優待制度を維持している銘柄のうち、最も順位が高かったのが5位の日本電信電話である。
マスメディアでは「優待投資家」がたびたび人気になるものの、個人投資家は大手企業や高配当株へ積極的に投資している。優待を重要視する動きは鳴りを潜めている。
優待銘柄の隠れた落とし穴
株主優待銘柄への投資が縮小してきた要因としては、株主優待の廃止が相次いでいることも大きい。これは、株主優待制度を導入する企業の動向からもうかがえる。
大和総研が2023年に公表した調査結果によれば、日本の全上場企業の約4割に当たる1463社が22年9月時点で株主優待を実施している。そして、上場企業の株主優待導入というトレンドは、過去20年以上にわたって増加基調にあったものの、優待廃止がしきりに囁かれた22年よりも一足早く、その増加傾向は19年をピークに頭打ちとなっていた。
大和総研によれば、株主優待の廃止を発表した翌日の株価パフォーマンスによって投資家が得られるリターンは、優待廃止を発表しなかったと仮定した場合に比べ、平均的に5〜6%ほど低下するという。つまり優待銘柄の株主にとって、優待が廃止された場合にはそれを得られなくなるだけでなく、一日で株価が大きく下落するというダブルパンチのリスクがあるのだ。
株主優待の恩恵を受ける個人投資家の中には、業績や財務状況という企業の本質的な価値よりも、いかに魅力的な株主優待が提供されるかという点に価値を置いて売買判断を下す人も少なくない。優待廃止がトレンドになったことで、優待銘柄への投資に懸念が生じ、投資家の動向が変化していると考えられる。
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