生活苦は「社会保険料」のせいなのか? 負担率から本当の原因を考える(2/3 ページ)
最近「生活が苦しい」とSNSや街の声としてテレビで聞くようになりました。その要因の一つとして「社会保険料」が挙げられていますが、本当に社会保険料が生活苦をつくりだしているのでしょうか? 負担率から真の要因について考えていきます。
フリーランスになれば、社会保険の負担は減るのか?
とはいえ、控除率は据え置かれているものの、老後に支給されるか不透明な厚生年金に対する不満を持つ人がいるのは納得できます。不満を感じている人の数は、若年層に多いように思います。
SNSで「議員には社会保険料の納付がなく国民年金と国民健康保険を払えば済む」という投稿を目にしたこともあります。厚生年金が将来どのくらい支給されるのか、支払いとそのリターンに関する説明は、本題からそれるので割愛しますが、フリーランスのように自ら国民健康保険を支払った場合は、一般的に社会保険料の控除よりも大きな負担となります(会社に所属している間は、会社が社会保険料の半分を負担してくれるため)。
国民健康保険料は、前年の1〜12月の所得や年齢、家族構成などを基に計算しますが、所得金額500万円で東京都新宿区に住む場合、月額の健康保険料は4万1530円に達します。このほか国民年金を月額1万6520円支払う必要があります。
さらに国民健康保険には、傷病手当金制度のような病気や怪我で働けなくなったときにお金をもらえる制度がありませんので、個人で就業不能保険など民間の保険に入って備える必要があります。こうした状況を考慮すると、フリーランスは社会保険料を支払わなくて済むとしても、健康保険料や国民年金の全額納付に加え、他の補償も自身で備える必要があるため、社会保障に該当する負担が小さいとはいえません。
あえて社会保険に加入しようとする個人事業主もいる
もっとも個人事業主やフリーランスは、確定申告で経費を申告すれば、所得を低く抑えられると反論する人もいるかもしれません。しかし経費として計上できるのは、仕事に関連する内容であり限度があります。
そこで使われているのが、マイクロ法人という社長一人で運営する法人を設立して社会保険に加入するという方法です。ネットなどで「マイクロ法人を使った節税テクニック」などという言葉を見たこともあるのではないでしょうか? 魅力的な反面、胡散くさい雰囲気を感じている人もいるかと思います。ただ、これは脱法でも特別変わったノウハウでもなく、法人の社長でも報酬額に応じて社会保険に加入する義務があるという制度に他なりません。社長の報酬を最低限に抑えれば、社会保険料の支払額を低額で抑えられえるという仕組みです。国民年金の場合は、扶養という概念がないので家族がいればそれぞれ支払う必要がありますが、社会保険料は扶養制度を利用できれば、負担するのは一人で済みます。
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