「経験則」からAI活用へ オイシックス・ラ・大地の“攻めのサステナブル”:需要予測(2/2 ページ)
ミールキットのサブスクリプション販売などで知られるオイシックス・ラ・大地。持続的な成長とフードロス削減を両立させるには、デジタル文脈での組織力強化が不可欠だった。
「経験則からAI」で需要予測の精度が20%改善
――AIやLLMを使った高度なデータ活用とは、具体的にどのような取り組みをしているのでしょうか。
現在、一番の主力商品であるミールキット「Kit Oisix」の需要予測を行っています。
この商品から始めている理由は、売り上げのうち最も大きい割合を占めていることもありますが、サプライチェーンが非常に複雑であるからです。
Kit Oisixの原材料は冷凍、日販品、青果などいろいろなもので構成されているほか、ものによっては海外から輸入しているものもあります。生産についても一部外部に依頼しているものもあり、調達のリードタイムはバラバラです。
このような背景から、需要予測がずれると在庫や廃棄量に大きな影響を及ぼすため、まずはここからやっていこうということでKit Oisixの需要予測に着手しています。
――需要予測はどのように行っているのでしょうか。
過去の販売履歴などをAIに学習させて予測を出しています。どのような販促を行ったときにどれくらい売れたかといったデータですね。当社ではサブスクリプションによる販売の他に、追加のサブスクリプション商品や、通常のECのように商品を選んで購入してもらうなど、さまざまな販売方法があります。
面白いのが、それぞれの販売方法によって売れていく原理が違うところです。これまでは「この商品ならこれくらい売れるだろう、または売りたい」という経験則や気持ちに基づいた計画でした。今では顧客の購買履歴などを基に階層に分け、階層ごとの需要予測を立てられるようになりました。
――AIを活用してどの程度精度が上がったのでしょうか。また今後の展望をお聞かせください。
需要予測の精度は従来より20%ほど改善しています。そしてこれはまだまだ改善の余地があると考えています。まだわれわれが持っているデータは不完全であり、追加のデータも取得しながら行っている段階です。またアルゴリズムの部分でも改善できると思っていて、こうした改善を進めれば30%くらいは精度を改善できると思います。
食に関するビジネスは人間の生活にとって重要な役割を持つ一方で、なかなかデータ活用による効率化・持続化が難しい業界でもあります。こうした解決されてこなかった課題に取り組めることは、新しい道を切り開いていく意味でも大きなモチベーションになっています。
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