AIもいずれ感情を持つ――人間に残された仕事は「不完全さ」にある:新春トップインタビュー 〜ゲームチェンジャーを追う〜(4/4 ページ)
社員一人一人の「デジタルクローン」を作製し、業務の一部を代行させているAIスタートアップのオルツ。多くの業務をAIクローンが代行できるようになった場合、私たちリアルな人間に求められる役割とは一体、何なのか。米倉千貴CEOに聞いた。
人間だけが持つ「無目的を追求する」ことの価値
――不完全を楽しめること、ですか
米倉CEO: 例えばスポーツが分かりやすい。ロボットがスポーツをしているのを見ていても楽しめるだろうか。それはそれで楽しみ方があるかもしれないが、人間にあんなプレーができるのかということで感動が生まれる。そういった不完全であることを楽しめる、かつそれに興奮するとか刺激を受けるというものにヒントがあるのかなと思っている。
――いずれAIも感情理解を得るかもしれませんが、少なくとも現状は、感情がクローンと人間の違いを決定づけるもの。感情を磨くためにはどうすればいいと考えますか?
米倉CEO: すごく難しいが、僕は大真面目に考えると「チャレンジと自分の好きを追求すること」だと思っている。
最近いい言葉だと思ったのは「無目的を追求する力は人間にしか持ち得ない」ということ。例えば、昆虫を集めている、切手を集めている。こうした活動に経済合理性はない。こういう無目的の中に、人間にしか分からない価値観というものがあって、それを追求していく力は人間しか持つ理由がない。なぜ追い求めるか分からないものに結構、価値があるのかなと思っている。
――最後に、競争の激しいAI分野において、どう業界をリードしていこうと考えているのか意気込みを教えてください
米倉CEO: 最近よく言っているのは、AI企業で日本初の1兆円企業になること。
日本のIT産業は欧米と比べるとはるかに非力。今までのIT産業の経営者と同じスタンスで行くと同じ道をたどってしまうので、全然違うバリューの在り方にチャレンジしていかないといけないと思っている。まだ山の麓に立っている段階。ここから頂上まで、98%ぐらい登らなければならないが、5年で目標を達成したい。
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